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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2008

07/09

Wed.

不定期連続小説「MoE/AtW」 

第7話「済んだ鐘の音の様な」

ダイアロスの夕暮れは、壮大だ。

特にミーリム海岸からならば、海に向かって落ちて往く太陽が海を真っ朱に染めその時間だけいつもと違う様相を呈する。

まぁ、時間を区切っていけば時間時間で様相は違うが、とりわけ海というのは時間での変化が激しいものだと、エリノアは思った。

「綺麗……」

狩の帰り、ふと見た海は、その一言に尽きた。

血の色でも、薔薇の色でもない。この朱なら確かに情熱的という表現は似合う。

「……」

エリノアには―

太陽が「また明日」と手を振っているようにも見えた。

「また、明日……か」

誰に送るわけでもないが、エリノアは海に向かって小さく手を振ってみた。誰かが手を振り返してくれるわけでもないのに、妙な充足感を得ることが出来た。

「さぁ、明日のためにお買い物しなきゃ」

そして我に帰り、ビスクの城門へと、また歩き始める―

はぐれイクシオン辺りを安定して狩れる様になってきた近頃。

一度の狩で出る収益もだいぶ上がってきた。

そういえばそろそろ悟りの石も必要かもしれない。

黄昏と 誰の背中に 眼を細め―




「ただいまー」

「おかえり、って、誰の家でもないんだが……」

煉は返事をしてからふと気づいたが、最早ビスク港の海を見渡せるベンチは彼の家といっても過言ではない。

どういう訳か知らないが雨が降っても、ベンチを囲む数立方メートルはまったく濡れなかった。

まるで、雨が避けているかのように。

「今日のご飯はなんだろなっと」

「いつもどおり適当に買ってきたわよ」

「ほいほい」

紙袋から次々と食べ物を取り出していくのだが、その量が半端ない。

「最近良く食うな……」

煉は呆れ気味にそう言った。

「御腹が空くんだからしょうがないじゃない」

「……」

煉の食事量とエリノアのそれを比較すると、凡そ2、3倍の差があったりするから困る。

「まぁ、食べるか」

「そうね」

「「いただきます」」

言おうと思ったことは筒抜けになるので、我慢したのは当然である。




「こんばんは」

食事を終えて、のんびりしていると、ブリュンヒルドが現れた。

服装はグリフォンを狩りに出ていた時の様な鎧のパーツとハイキャスターローブで、小さな紙袋を抱えている。

「よっ」

挨拶もソコソコにベンチへ座り込むブリュンヒルド。

「お腹空いたわ……」

紙袋の中身は出来立てとは言いがたいが栄養がきっちり考えられた料理が入っていた。

「まだ晩御飯食べてなかったの?」

「ちょっと狩とか色々長引いちゃって、さっきビスクに戻ってきたところ」

疲れた、と言葉を体現するかのように全力でリラックスしつつ、ため息一つ。

「どうやら、疲れたとか言う割には息の吐き方が別っぽいな」

「……無駄に勘がいいのね」

伸びをして、目を細めた。

「雰囲気を見れば解る」

「まぁ、PTの面子にいやな奴がいただけ」

なんてことは無い、とホットドッグに噛り付く。

「対人関係は大変でしょうね、私にはあまり縁が無いけど」

「そういや、エリノア。お前の知り合いに会ったことが無いな」

「ダイアロスに流れ着いてから色々教えてくれる人は居たけど、長い付き合いの人は居ないかも」

「じゃあ、今までほとんど全部一人でやってきたの?」

「そうなるわね」

「バイタリティありすぎだろ……」

「……そうかしら?」

本人と煉達の間には見解の相違があるのは言うまでも無い。

「さて、二人とも。明日の午後は暇か?」

「私は狩に出なければいいだけの話しだけど」

「午後……夕方になるかもしれないわ」

「まぁ、さしたる問題は無い。演奏できそうな場所の目星が付いたから、明日辺り一度下見と許可を取りに行こうと思ってな。交渉に時間が掛かれば弾き始めは夕方になるかもしれない」

「何で許可が要るの?」

別に騒音になるわけでもないのに、とエリノア。

「明日になればわかる、いろんな意味で」

「「?」」

いくつかの疑問を含んだまま日が変わる―




「煉、貴方本気?」


「勿論だ」


ビスク中央エリア。


時は昼下がり、狩の休憩ついでに補給しに来ている冒険者、夕方から夜に向けて、露天の準備をしている者。


とあるガードは暇そうに欠伸をし掛け、となりのガードにケツを蹴飛ばされていた。


「屋内だとは思っていたけど、まさか此処でやるとは思わなかったわ」


「闘技場のど真ん中でピアノを弾くつもりはないからな」


大聖堂前。


煉とエリノアはそこに立ち尽くしていた。


喧騒が渦巻く中で、荘厳な雰囲気を宿したその建物の周りだけはさすがに静かだった。


「確かに許可が要りそうなものだわ……」


「問題は誰に許可を取ればいいのか、だな」


誰に許可を取ろうとしても碌な事にならなそうな気がする。


「あのー、何か御用?」


東屋からこちらを眺めていた少女が二人に声を掛けた。


「アルケィナに入りたいなら、マイナーバーストを覚えてきて欲しいな」


「いや、ギルドに入りたいんじゃなくて……」


あわててエリノアが否定した。


「え?違うの?許可がどうとか聞こえたから……」


「エリノア」


「な、何?」


「あのガキ、誰だ?」


「……」


何だか空気の温度が下がった気がした。


「錬金術ギルド、アルケィナのギルドマスター代理、フレッサちゃ……さんよ」


「まぁ、フレッサは代理なんだけどね」


「なるほど、道理で。悪かった」


女性に対する非礼というのはどの世界でも共通なもので。

煉は素直に詫びることにした。
「ここの図書室を借りたいんだが、良いか?」
「誰でも閲覧可能だから、ご自由に。あ、でも……」
「?」

これからすることに気づいているのだろうか、フレッサは俯きつつ―


「君達は暗使とかシェル・レランに所属していないよね?」


「私は武閃所属ですけど、回復魔法も扱えます。勉強をしに……」


「オレは無所属」


「うん、それなら大丈夫。あまりうるさくしないでね」


途端、フレッサは明るい笑顔を浮かべてそう言った。


「五月蝿くはならんだろうが……、まぁ迷惑になりそうなら言ってくれればいい」


「え?」


フレッサが頭に疑問符を浮かべている間に、二人はさっさと大聖堂へ入っていくのだった。


「確かに此処なら静かだし、悪くないと思うけど……」


肝心の図書室には司書が一人居るだけで、静寂を纏っていた。


「まぁ、悪いのはオレだけだ。お前は一応止めてくれたわけだしな」


本棚と本棚の間にあるちょっとしたステージの上に立ち、煉は一通り図書室を見回した。


「それじゃ、始めるか」


そう言って、煉が床に手を置いた直後―


「え……」


鈍く黒光りするそれが、姿を現した。言っておくがゴキブリではない。


まるでずっと前からその場にあったかのように、堂々と鎮座している。


「これが?」


予想よりずっと大きなそれの迫力にたじろぎつつ、エリノアが問う。


「そう、こんないい場所でやるなら良いピアノを用意しないとな」


煉はどこか誇らしげに、たった今取り出したグランドピアノの蓋を開いた。


金属や絃、様々な部品が複雑に組み上げられた、見る人から見ればそれは芸術と呼べそうな代物。


「何ていうか……ごつい、ううん。迫力があるわね」


それが、エリノアが浮かべたピアノに対する印象で、イヤホンから聴こえたあんな綺麗な音をこんなのが出せるとは到底思えなかった。


「まぁ、回復魔法の教本でも持ってきて読みながら聴けばいい。黙りこくる聴衆に向けて弾くような大それた音楽は出来ないんでな」


自嘲するような笑みと共に、エリノアにそう促す。


エリノアは期待半分不安半分にそわそわしつつ、一冊の教本を手に取りステージに一番近い椅子に腰掛けた。


「んじゃ、指慣らしがてらに一曲、弾かせてもらう」


「……」


煉の指がいくつかの鍵盤を叩き、ピアノが音を奏でた瞬間。





一体何人が大聖堂へ視線を向けただろう。


瑞々しく良く通る音色が、普段は物音を立てることが憚られる大聖堂から流れてくるのだ。


またそれの美しさに息を呑む者も居ただろう。


エリノアも例外なく、息を呑み、ピアノの音色に飲み込まれていた。


一番近くで聴く彼女だから感じられる。


世の中には眼に見えなくてもこんな素晴らしい芸術があったのか、と。


イヤホンから流れてきた音色も十分魅力的だった。


だが、今こうやって演奏を直に聴く事で、今まで聴いていたそれがあっという間に霞んでしまう位。


それほど、素晴らしいものだった。





「……」


最後の一音の響きが途絶えても、エリノアは声を発せずにいた。


筆舌に尽くしがたいとはよく言ったもの。


この感情をどう表現したらいいのか解らなかった。


「よく響くな。こんな場所で一曲弾けただけでも満足だ」


「あ……」


煉の声によってようやっと我に帰り、エリノアは彼の顔を見上げた。


言葉通り、やたら満足気な笑顔を浮かべている。


「どうだった?ピアノの音色は」


「何て言うか……綺麗で、心に直接響くような素直な音色ね。こういうの、好きかも」


「なら良かった―」


「今の何!?」


フレッサが図書室に駆け込んできて、その場の光景を見て。


「……」


固まった。まぁ、当然のことかもしれないが。


「五月蝿くはなかった筈だが、迷惑だったか?」

悪びれる様子もなく、煉は訊ねる。

「え?いや、そんなことは……。ってそういう問題じゃないよっ!」


そこへ、慎ましやかな拍手の音と共に、一人の女性が現れた。

「ミスト様」

「どなたが演奏なさっているのかと思いまして」

どこか神々しい雰囲気を醸し出している美しい女性は、ピアノと煉を交互に眺め、姿どおりの美しい声で言った。

「よき音楽を聴かせて頂きました。感謝いたします」

「別に誰かに聴いて貰う為に弾いたわけじゃないんだが、そう思ってくれたならオレも嬉しい」

「ちょっと、キミ言葉を慎み―」

「フレッサ」

ミストと呼ばれた女性は変わらぬ口調でフレッサを制すと、そのまま煉とエリノアの元へ歩みを進めた。

「私も此処でご拝聴しても、宜しいですか?」

エリノアの隣に腰掛けると、一層柔和な笑みを浮かべ、エリノアを別の意味でたじろがせた。

「あぁ」

「ほら、フレッサも」

「えと、でもフレッサクエストとかの報告を待たなきゃ……。ギルドに入りたいって人も来るかも」

「仮に報告に来たとしても、彼の音楽を聴けば、先ほどの貴女のようになりますよ」

ミストの笑みは、砕いて言うなら破壊力が高い。

結局言われるがまま、フレッサも着席。

「さぁ、次はどのような音楽を奏でてくださるので?」

そう囃されて、煉は何を弾こうか考える内に、

「……確か、ビスクはラル・ファク教を信仰しているんだったな」

最近覚えたビスク独特の別れの挨拶を思い出し、ミストへ確認してみた。

「えぇ、貴方は神を信じませんか?」

「昔から居る神様ってのはどうも好きになれん、別にラル・ファク教を穢すつもりはないからな」

「解っています」

とはいえ、若干残念そうではある。

「……とはいえ、神が宿るような何かは信じられる。芸術もその一つだろう」

「私もそう思います。貴方の奏でる音楽がそうであるように」

「人を褒めるのが巧いな」

煉のそれは皮肉だが、

「私には人がどんな風に生きれば輝くのか導くことが出来ますので」

ミストにとっては真の意味で褒め言葉だった。

「まぁ、宗教地味た曲ってわけでもないが『主よ、人の望みの喜びよ』より、『子供の落書き帳』」

再び、ビスクの町並みの時間が、鈍りだした―





「あー終わったー」

所変わって此処は―

「ブリュンちゃん、これからヤンオルでも狩に行かない?」

少年少女がこれからの予定で賑わいを見せる『部屋』に、ブリュンヒルドはいた。

「あ、ゴメン。今日はちょっと無理なの。先約があって―」

思ったよりも事が長引いてしまった為、急いで身支度を整えている最中だ。

「ワタクシも一緒に行って差し上げようと思ったのに、良いのかしら?」

眩いばかりの金髪を丁寧に縦ロールさせた、如何にも優等生です、とでも言いたげな少女がブリュンヒルドに詰め寄る。

態度が妙に強気なのは、彼女が実際に優等生であることを表している。

「このワタクシが居れば、ヤングオルヴァンごとき束になっても赤ん坊の手を捻る様に倒して見せますわ。報酬もいつもの2倍は約束しますわよ」

「あんたと一緒じゃどこにも行きたくないわ。どんなに儲けが良くてもね」

負けじとブリュンヒルドも強気な眼差しで金髪の少女に言い返す。

「失礼ですわね!もういいですわっ!フィリア、ハウリル、参りましょう。今日はブリュンヒルドが居ない分、分け前は増えますことよ!」

おーほっほっほっほ!と、やや使い古された高笑いを残しつつ、金髪の少女は部屋を去っていった。

「本当に行かなくて大丈夫なの?」

フィリアと呼ばれたニューターの少女は、心配そうな面持ちでブリュンヒルドに訊ねる。

「只でさえ学校サボりがちなのに、スキルも置いてかれちゃうんじゃ……」

そこに、ハウリルと呼ばれた同じくニューターの少年も重ねて言った。

「大丈夫、私は私なりに努力してるの。日が変わる頃には寮に戻るから」

最後に机の横に掛けられていた帽子を被り、ブリュンヒルドは歩き出した。

「あっ……」

「そうそう、あまりイザベラを調子に乗らせないほうがいいわよ。まったく学校は優劣を付ける為じゃなくて、知識を取り入れ仲間と共に研鑽する場所だって言うのに―」

台詞を最後まで聞く前にブリュンヒルドは同じく部屋を出て行った。

「……最近、ブリュンちゃん忙しいのかな」

取り残された二人は、

「―これは、何かありそうな気配ですわね」

「イザベラさん、何時の間に。っていうかさっき出て行ったのに……」

「決めましたわ、二人共今日は狩をやめてブリュンヒルドが何をしているのか調査しましょう」

「え?いや、俺もう狩に出る気満々だったんですけど」

「わたしもー……」

二人共、それぞれ武器を新品同様に修理し磨き上げていることが、今日の狩に対するやる気を物語っている。

「私の言うことが聞けないとでも?」

ぎろり。

「「……ハァ」」

結局イザベラに振り回されることになるのだった。

―此処はギムナジウムビスク分校のとある教室。

厳しい試験を突破したあらゆる種族の少年少女が、魔法と技を学び、日々研鑽する場所である―


「……」

さて、舞台は再度ビスク大聖堂付近へ。

煉からは歩いていれば直ぐに解る場所で演奏する、とだけ聞かされていた。

「なんて言うか、何があったのかしら」

老若男女種族を問わず、表情は幸せそうだ。

「生きているって何て幸せなんだろう」

「故郷の母さん、元気にしてるかなぁ」

とか何とか。

「……」

と、その時だ。

瑞々しい音色が大聖堂から響いてきた。

「なるほど、これは周りの光景も頷けるわ」

心根に直接届くようなその音色に、ブリュンヒルドは状況を理解し、まるで呼び寄せられるかのように大聖堂へ歩みを進めた。



「ブリュンヒルド、随分遅いな」

何曲弾いたのか解らないが、とりあえず一旦休憩しようと煉は板を閉じた。

「どれだけ聴いても、飽きませんね」

「……」

ミストの言葉に、エリノアは無言で頷き、

「まるで魔法みたい」

フレッサも同感のようだった。

ところで、ギルドマスターの業務はどうしt―

「ごめんなさい、遅くなっちゃった」

現れたのは長い白髪に藍色のファインシルクローブを羽織ったニューターの少女だった。

「……ブリュンヒルドか?」

煉が疑問形になるのも不思議ではない。

「あぁ、帽子を被ったままじゃ判り辛かったかしら」

彼女は苦笑しつつ帽子をとると、いつもの彼女だ。

「あ、懐かしい」

フレッサが机の上に置かれた防止を手に取り被って見せた。

「何度か此処にくるのを見かけたことあるけど、キミ、ギムナジウムの生徒なんだね。普通科?」

「はい、先輩も普通科でしたよね」

「……先輩?」

聞かなかった事にしよう。

「何だか外の様子がおかしいんだけど、それのせいみたいね」

「いえ、私が少し魔力を乗せました。申し訳なかったのですが、ここに人が集まりすぎても困るので……。何故あなたに通用しなかったのか分かりませんが、何となく納得できますね」

「はぁ……って、ミスト様!?」

直ぐ傍にいたにもかかわらず、やっとミストの存在に気づいたブリュンヒルドは、大仰に驚いた。

「ずっとそこにいらっしゃったのに……」

エリノアは苦笑を漏らしつつ、ブリュンヒルドに言った。

ブリュンヒルドには、案外天然の気質があるのかも……しれない。

「さて、予定の客人が全員集まったところで。休憩は終わりにするか」

再び蓋を開いて、椅子に腰掛けなおす。

「次はどのような音楽を奏でてくださるので?」

「そうだな……」

陽が暮れるまで、ピアノの音色が止むことはなかった―



ビスクに夜を告げる鐘の音が鳴り響く。

心なしか、音量が小さい気がするが、ミストが乗せた魔力が影響しているのは言うまでもない。

「毎度毎度思ってたが、夜にまであんな喧しく鐘を叩かれたら堪ったもんじゃないよな」

蝋燭が照らす明かりの元、煉がふと呟いた。

「これからは少し弱めに叩くように頼んでおきましょうか」

「そうしてもらえると、この時間ゆっくり寝られていいだろうぜ」

実際はた迷惑なほどの音量に叩き起こされたのは一度や二度ではない。

「でも、夜に警備をするガードには重要だと思いますよ」

反論はフレッサから。

確かに時報として活用してきたが、本来はそういう意味だったらしい。なるほど、そのための鐘か、と煉は納得した。

「それもそうか、まぁ耳栓すれば言いだけの話だしな」

そう言って煉は再びピアノに体を向ける。

「じゃあ、最後の曲だ。鐘で思い出した」

頭の中で譜面を思い出し、その難易度に最後にふさわしいなと呟いた。

「こんなに長い時間聴いていたのに、少しも飽きないのが不思議ですね」

「言われて見れば……、お腹が空いて来ちゃいました」

途端エリノアの腹から響く主張が緊迫感を台無しにしたのは言うまでも無い。

「我慢できないなら先に抜けていいぞ」

煉はひとしきり笑うと、そう言ったが。

「こっちの方が大事よ」

きっぱり。

「へいへい……」

そして、最後の曲が始まった。

今まではどちらかというと明るく緩やかな雰囲気のそれが多かったが、今こうして奏でられている曲は何処かもの悲しく寂しげな雰囲気だった。

まるで、これで終わりと言う事を知る誰かが、惜しむかのような―



「―今日は非常に良い出会いを頂きました。感謝させていただきます」

あっさりと最後の曲は終わりを迎えて、別れの時。

出したときと同じように一瞬にしてピアノをどこかへと仕舞ったのには流石にミストやフレッサも驚いていたが、煉は魔法だと言って譲らなかった。

「別にオレが弾きたくて弾いてただけだから、例を言う必要は無いと思うが。寧ろ礼を言うのはオレの方さ。いきなり押しかけておいてすまなかった。そして、ありがとう」

「感動を与えてくださったのは貴方ですよ。そう謙遜なさらないで」

「……まぁ、其処まで言うなら感謝の言葉は受け取らせてもらうかね」

「ブリュンヒルドさん、勉強頑張ってね。フレッサ、応援するよ」

「先輩も色々大変でしょうけど、ギルドマスターがんばって下さい」

「れーん!ブリュンー!早く行こうよー!」

空腹が限界なのか、エリノアは既に広場へと繋がる橋を渡り終えたところからブンブンと腕を振り二人に呼びかける。

それを聞いた一堂は再び笑いに包まれたが、エリノアはいたって真剣だったというのがまた滑稽な物で。

「あ い つ は」

今日一番の笑い声を上げていた煉が、腹を押さえながら苦しげに呟いた。

「エリーらしいわね」

「さぁ、私達も食事にしましょうか」

「そうしましょう。フレッサもお腹が空いちゃった。

おし♪それじゃ。またねっ」

煉たちの姿が見えなくなった後―

「面白い方達ですけど、何処か不思議ですよね」

ふと、フレッサが言った。

「あなたもそう思いましたか……。実は、私もです。

全員が不思議な何かを感じさせてくれましたが、特にあの煉というヒューマンからはもっと異質な何かが伝わってきました」

「少し、調べてみましょうか?」

「―いえ、悪意では有りませんでした。寧ろ……」

ミストは煉から感じ取ったそれを、見てみたくなった。

輝きと『何か』に溢れた異質な雰囲気を―



to be―



え?ところであの3人はどうなったのかって?

「イザベラさん、もう帰りましょうよ……」

「イヤですわ!あの子が隠してることと言ったら、絶対に秘密の修行場ですもの。このワタクシに内緒で特訓しているだなんて許せません!」

「そうかなぁ。狩りに行くような雰囲気じゃなかったんだけど」

「私の判断に間違いがあるわけ無いですの!ほらさっさと進みますわよ」

こういうの、やっかみっていうんだろうね。

「どこにいますのー!?」

少なくとも煉のピアノの音が聞こえないとあるダンジョンに、ヒステリックな叫び声が響くのだった―



to be contえ?まだ何かあるの?



「―あなた達、疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

「色々あってね……」

「今日はもう訓練に出たくないよぉ」

お疲れ様。



to be continued...
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