10« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.»12

Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

--

--/--

--.

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Posted on --:-- [edit]

category: スポンサー広告

trackback: --     comment: --

Page top△

2008

04/18

Fri.

不定期連続小説「MoE / AtW」 

第3話「文明の(傍迷惑な)英知」

「ミーリム海岸奥地にはイクシオンと言われる魚人が生息、エイシスケイブと呼ばれるダンジョン内には潜入していないものの、並みの人物では危険な場所と判断」

ビスク港の海が見えるベンチに腰掛、煉は何やら一心不乱にペンを走らせていた。

「―魔法を使うにはノアダストやノアパウダーと呼ばれる触媒が必要。魔力と言うのは『魔法の威力を現す概念的な単位』として用いられる模様。当人でもノア何とやらとある程度の知識があればダイアロスの魔法は使えるらしい」

それでもマジックポイントが0になるとホイミでさえも使えない状態になる、と書こうとして、止めた。

この世界に、ホイミなんてないからだ。

ケアルとかも却下。

この世界における治療魔法と言えば、マイナーヒーリングに始まるのだから。

「面白い世界だ」

いったん手を休め、空を見上げる。

どこの世界にもある太陽。

煉にはなぜか、それが近くにあるように感じられた。

「あら、煉。また此処にいたの?」

後ろから狩りの帰りらしいエリノアが声をかけた。

煉は何の反応も示さない。

「煉?」

「……」

煉は思い出したかのように再びペンを走らせ始める。

エリノアは興味深げにそれを覗いてみたが、訳のわからない文字(?)の羅列が何行にも続いているだけで、意味を理解できなかった。

「ん?」

影に覆われて、やっと存在に気づいたのか、煉が耳から何かを外しつつ顔を上げた。

「何だ、エリノアか」

そして、つまらなさそうな顔。

エリノアはむっとして、

「こんな美少女に声をかけてもらえるだけ幸せだと思ったらどう?」

華奢な体を精一杯使ってアピール。

「へいへい、オレは幸せですよっと、……こんな変なやつと縁が出来たことがな」

ポツリ。

「何か変なこと言わなかった?」

「気のせいだ」

しれっと。

煉は受け流して、またペンを走らせる。

「何なの、それ?」

「仕事のレポートだ。ほら、この前行ったミーリム海岸の奥のほう」

今度は作業をしながらの返答。

「それが仕事なの?もう地図は出来上がってるのに、何でまた……」

「地形が変わってたり、モンスターの配置がどうとか、色々あるだろう?10年でだいぶ変わるもんだ」

「そっか、そういうことね」

言われてみて納得。

確かに最近乱獲が原因で生態系が変わりつつあると言うのを聞いたことがある。

「ってことはいろんなところを旅してるの?」

「いや、始めたばかりだ。実際のところこの辺り近辺のしか出来上がってない」

「ダメじゃない」

「お前に関わられてから効率が半減したんだが」

「私の魅力に首っ丈なの?」

「……」

もういいから、と言わんばかりに、煉は耳に何かをはめた。

「何それ?」

エリノアからすれば初めて見るものだ。

黒いコードでつながれた何か。

何か、としか形容しがたい。

「音楽を聴くための機械だが……」

とまで言った所で煉はやっちまった、と顔を手で押さえた。

きらきら。

「ねぇ」

「ん?」

煉はあえてそっけなく。

「私にも聴かせ……」

「却下だ」

「何よ、まだ言い終わってないじゃない」

「最後まで言いかけてただろうが」

ぎゃーすかぎゃーすか。

うんぬんかんぬん。

十数分に及ぶ言い争いの末―

「だぁっ!仕事の邪魔だっ!」

「聴かせてくれれば大人しくするわよ!!」

「その言葉に嘘はないな?」

「勿論」

双方勝利と言う不思議な結末。

煉は耳につけている機械―要するにイヤホンをもう一つ取り出した。

本体の再生をとめて、イヤホンを挿すジャックに別のジャックを差し込んだ。

これでイヤホンを2つ付けられるようになったわけだが―

エリノアの目が輝きっぱなしだ。

どうにも先日のギターの影響が大きいらしい。

今煉が聴いていたのはあんな素朴で美しいもんじゃないのだが。

聴けば黙っている、という内容で妥協したのはそのためだ。

「これを此処にこうやってつけて、あとは静かにしてろ」

「……」

エリノアが嬉々として頷いた。

煉はエリノアに見えないように、ほくそ笑み、音楽プレイヤーの再生スイッチを押した。

数秒後。

「!!!???」

エリノア、悶絶。

想像していた音楽とのギャップに戸惑う暇すらない。

鋭いビートと分厚いベース。ドラムによる割れんばかりのアクセント。

煉が聴いていたのは、ロックミュージック。しかも特別に激しいヤツだ。

まぁ、エリノアが来る直前までギターの曲を聴いていたのは内緒だ。

「世の中わがままだけじゃ通らないんだ」

苦笑しながら、煉は急いで「レポート」を完成させようと記入スピードを上げた。

となりでエリノアが死んだ魚のような目をしていたのが、ちょっと可哀想に思えたからだった―



一時間も経つ頃。

「―よし、出来た」

用紙とペンを仕舞い、となりの様子を眺めてみる。

「……」

何だか、ぴくぴくしている。

浜に打ち上げられて時間の経った魚のようだ。目はとっくに何処かへとトリップしていた。

「あー、いかん……やりすぎた」

煉は反省しつつ眉間を掻いてプレイヤーを操作。

音楽が変わった。

それは如何とも美しいピアノの曲。

所謂エチュードと呼ばれる単調ながらも深みと鮮やかさのある曲である。これが練習曲などと言うのだから作曲者の頭はどうかしている、と煉は今でも聴くたびに思い出す。

「……」

エリノアの目に光が戻り始めた。

そして、聴く内に自然と零れてくる笑み。少女と大人の狭間独特の可愛らしい微笑だった。

「……」

その笑顔は純真で、とても幸せそうだと言う事が判断できた。

数分もするとエチュードは終わり、それきり音楽は流れない。

「あら?」

エリノアが不思議そうに煉を見つめる。

「仕事が片付いた。もう黙ってる必要はない」

「あ、そうなの?また聴きたいなぁ……」

「その内聴かせてやるさ。最初辺りのでいいならな」

トリップしている様子を思い出し、煉は苦笑した。

「あ、最初ので意識が飛んだかと思ったわ……。とても豪快だけど、繊細な曲だったわね」

「しっかり聴いてやがったか」

ちっ、と煉は舌を鳴らして残念そうにつぶやいた。実に残念そうである。

「まさか最初からそのつもりだったの?」

「勿論」

さっきの台詞を鸚鵡返しをするかの様に、煉は一言で返した。

「でも、ちゃんと全部聴いちゃった♪最初のと、6番目と―」

思い出したかのように、

「最後のきれいな曲!!あれ何!?」

目を輝かせたまま、エリノアは煉へ縋り寄る。

「あれは……昔オレが弾いた名も無い練習曲(エチュード)さ。ピアノの独奏曲(ソナチネ)っつう割には味気ないもんだ」

感慨深げに煉は答えた。

何だか大事なものを愛しむ様な、そんな優しい目をしていた。

「きれいな音を出す楽器なのね」

「ピアノっていうんだ。オレが一番好きで、一番慣れ親しんだ楽器だ」

「ピアノ、そう……ピアノって言うんだ」

その単語を頭の中に刻み付けるため、エリノアは幾度か単語を反芻した。

「気が向けば、いつか聴かせてやる」

「約束だからね?」

「……あぁ」

エリノアの瞳に吸い込まれるかのように、煉は答えた。

ビスクはもうすぐ夕暮れ、黄昏時。

月が空の頂に昇っても二人の声が港に響き続けた。



「……腹が減った」

「ねぇ!聞いてるの!?」

「勘弁してくれ……」



To be continued...
スポンサーサイト

Posted on 13:42 [edit]

category: MoE小説<現行作品>

Page top△

コメント投稿

Secret

Page top△

トラックバックURL

→http://weezeract2.blog81.fc2.com/tb.php/153-638d143e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Page top△

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。