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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2008

03/31

Mon.

不定期連続小説「MoE / AtW」 

第1話「始まりは港のベンチから」

「はふぅ……」

城下町ビスク。

ラル・ファク教が根付くこの城下町は何時だって人で賑わっている。

そこかしこで露店がある。

今日の収穫を金に換えようとして簡単にシートの上に並べている冒険者。

自分の商品が如何に凄いかを大声で宣伝する商人。

武芸を大道芸に置き換えて日銭を稼ぐ武人がいたり。

ガードに捕まってどこかに連れてかれて行く物もいる。

得てして、いろんな意味で賑やか。それでいて、喧しい。

「どうしてこんな真夜中にこんな賑やかになれるのかしら……」

ソレは商い魂が豊かだとか、生きるのに必死なわけで。

だって、捕まったらどんな目にあうかはお察しだから。

「……」

そんな良くも悪くもある喧騒の中、コグニートの少女は、只憮然と歩いていた。

名はエリノアと言う。

シップは剣士。もっとも最近必死こいて刀剣の練習をしていたら何時の間にか本来の得意技を追い抜いてしまっただけで、本人は別のシップのつもりでいる。

あしらえて貰ったばかりだが、多々傷がついたスチールチェインメイルが月の光を浴びて微かに輝く。

それは主を守ったための武勇の証でもあった。

「あぁ、もうっ……」

一人呟いて、エリノアは歩を早めた。

途中、肉が焼ける美味しそうな匂いに魅かれたものの、そこはかとなく今の気分じゃ腹に収まらない。

もっと別の物で一杯だった。



「どうしてあんな……」

どうして彼女がこんなに不機嫌なのかと言うと。

ありていに言って、負けたからである。



刀剣の練習と、日銭を稼ぐためにミーリム海岸の奥の方に生息するサンドワームを狩りに行っていたときの事だ。

盾を駆使しつつ、不慣れに刀剣を振るい、必死になって覚えた技を試して失敗したりする内に、あっという間に日が暮れかけた。

「ハァッ!」

青銅製の剣は耐久性に優れるものの、如何せん切れ味に欠ける。

何度も斬りつけ斬りつけ、噛みつかれと繰り返すうちに一匹を倒す程度。

アースワームの生態上、何匹も寄ってこないことが嬉しかった。

収穫である岩塩をリュックに爪、要らないものを整理してそろそろ帰途につこうかと思った時だった。

ひたりひたり。

水分を含んだ独特の足音が、エリノアの警戒心を煽った。

「イクシオン……?」

PTを組んで小さいのを何度か狩った事があるが、自分ひとりではまだ無理な相手だ。

「逃げれば、何とかなる距離ね」

そう思ったら一目散、足の速さに自信はない。向こうが気づく前に立ち去るが良しである。

私には無理でも誰かが倒してくれるはず、だった。

「―キャアッ!?」

背中に伝わる冷気。

ソレがフリーズの魔法だと気付いたのは、転んだ後だった。

「まさか……」

イクシオンコメット。

巷で「初心者殺し」と言われるイクシオンの上位体。

複数の魔法と、技を駆使して、初心者中級者を苦しめる存在だ。

当然以前のPT狩りでも相手にしたことはあったが、到底相手にならず、一番強い剣士が倒してくれた。

しかし、便りになる仲間は居ない。

「ソウルバインダーに引き寄せしてもらうわけにいかないわ……」

全力疾走を決め込み、足に力を込める。

「悪いけど、虐めるならほかの人にして頂戴」

といいつつ振返ると、コメットの姿はなかった。

「―あら?どっか行ったのかしら……」

拍子抜けして、やはりゆっくり帰ろうと歩き始めた直後。

ひたりひたり―

「イヤァァァァァァッ!?」

後はもうお察しの通りである。



「油断したわ……」

何度目かのセリフを呟いて、エリノアは自分が静かなところに来たのに気付いた。

はっきりと自分の声が聞き取れたからだった。

「しばらくあそこには行きたくないわねぇ」

人の声に変わって聞こえ始めたのは風と波の音。

何時の間にか港の方面に出ていたらしい。

此処なら落ち着けるだろう、とエリノアは海が見渡せるベンチに腰をかけた。

「んご……」

隣のベンチにいた誰かを起こしてしまったようだ。

強そうな人だったら詫びのひとつでも入れておこうと、エリノアは目を凝らす。

「……」

何とも不思議な少年だった。

少年と言うには語弊があるのかもしれないが、ともかく若い男。

とりあえず、少年と明記しておこう。

年のころは二十に届くか届かないか、それくらい。尤も、そう見えるだけでもっと年下かもしれない。

闇に溶け込むかのような艶のない黒髪が肩の辺りまで伸びていて、潮風に揺られている。

服装は鎧ではなく、黒地に暗い蒼のラインが施された瀟洒な布服、絹だろうか肌触りは良さそうだ。

装備は、武器らしきものは見当たらない。と言う事は魔法使いの類か、五体を武器とする格闘家か。

ふと、少年と目が合った。

見つめた瞳は引き込まれるような漆黒。藍色の金属であしらわれた細いフレームのメガネが良く似合っていた。

顔立ちは端整で、ともすれば娘の様。

少年と言うのは単にエリノアの勘だがどうやら外れではないだろう。

「……」

少年は数秒エリノアを見つめた後、再び横になった。余程疲れているのだろうか、声一つ発さずに即座に寝息を立て始める。

「変なの」

エリノアは呟いて、只寄せては返すだけの波を見つめていた。

時々波間を跳ねる魚がいたりして、中々飽きないものだ。

そうこうしているうちに、隣の少年の眠気がうつったのか、眠気がエリノアを包み込む。

「盗られる物はないし、この時間に人は来ないから大丈夫よね?」

誰に問うでもなく、呟く。

勿論、間違っているのだが。

「まさか、その人が盗ったり……するわけないか」

決めたら早いもの、岩塩が中身の枕は少々寝心地が悪かったが、疲労と色々な何かに囚われているエリノアを開放するには充分だった。

「Zzz」

「―人を勝手にドロボウ扱いするなっての」

その声も、エリノアに聞こえていたのかどうか。

まぁ、聞こえていなかったに違いない。



夢を、見た。

花畑の中に立ち尽くす自分。

ドコからともなく聴こえてくる音楽。

懐かしいようでいて、聴いた事のない斬新なソレはエリノアの心を引き立てた。

慌てて音の源を探して歩き出す、そのうち走り出した。

近いようで遠い音楽はますますエリノアの心を逸らせる。

そのうち一本の大樹を見つけた。

音楽はそこから聴こえていた。

誰がこんな素晴らしい音楽を奏でているのか、エリノアは知りたくて堪らなくなった。

そして、奏者の姿を確認しようとして―



どたごとんっ



目が覚めた。



「あ痛たた……」

頭をさすりつつ、記憶を掘り返して、此処で眠りに落ちた事を思い出す。

「あの音楽って、何だったんだろう」

人間は夢の大半を忘れてしまうが、人間ではない彼女の場合、夢が記憶として形に残るのかは―解明されていない。

ともあれ、エリノアは今回見た夢を朧気ながらも記憶に留めていた。

思い出してみると、何だか―

「……あれ?」

己の体をさすって、

「隣にこんな美少女が寝ていたっていうのに、何もしないで行っちゃうなんてそんな人ね」

美少女か、損かはともかく。

当然の如く隣で眠っていた少年は居らず、その代わり、不思議な形をしたケースがベンチに立掛けられていた。

「?」

周りに誰もいない事を確認して、エリノアはそそそ、と近づきケースのロックらしきものを外した。

中身はますます変な物体だった。

材質は木。光沢があるからニカワか何かでコーティングしてあるだろう。素朴ながらも、味のある茶色が出ていた。

上に行くほど先は細くなっていて、表側には金属と得体の知れない透明な糸っぽい物が張られていた。

下の方は広くなっているものの、なぜか空洞だった。

「武器にしては、脆そうだけど……」

興味が沸いたので、ちょっとだけ弄ってみる事にした。

とりあえず、糸のようなものを指で弾いてみる。



美しい単音が港に響いた。



「綺麗……」

うっとり。

更に音を奏でてみたくなり、それを手に取った瞬間。

「ヲイこら」

背中へ、細い声が掛けられた。

「……」

「泥棒にしては間抜けだな、顔は覚えられてる上に、盗るタイミングならいくらだってあった」

「あ、あはは……」

エリノアの顔が引きつった笑みを浮かべる。

持ち主は、昨日隣のベンチで眠っていたかの少年であった。

「―こういう場合、ガードに突き出せばいいのか?」

間の抜けた、やる気に掛けている双眸がエリノアを見据える。

「ごめんなさいっ!」

とりあえず、何はなくとも、まずはここから。

エリノアは深く頭を下げた。

「……」

持ち主の表情は窺えない。

「出来心だったの!音が綺麗で……もっと聴きたくなっちゃって……」

ガードに突き出されるのだけは勘弁と、エリノアは必死に捲くし立てる。

「―ちょっと、いいか?」

少年がみょうちくりんなそれを手に取った。

「本当に音が聴きたかっただけなら、一曲だけ聴かせるからそれでいいだろう?」

「え?それ、楽器なの?」

ぱちくり。

「何だと思ったんだ?」

不安そうに少年が問う。

「脆そうだけど、武器じゃないかな……って」

「こんなんで、ロックゴーレムを粉砕できると思うか?」

「うん、ソレが粉砕する事だけは判るわ」

例外はあるとして、木材VS岩なら結果は知れている。

「……ともかく、之を聴いたらどっかに行ってくれ」

「え?許してくれるの?」

「ドロボウならもっと巧くやるし、巧い言い訳をする」

正直だ、と褒められているのか。

そのまんま、貶されているのか。

読者の皆さんならお察し。

……ですよね?

「失礼ね、私は―」

楽器から発せられた音色がエリノアの思考を遮断した。



「……」

時間にして、3分ほど。

少年の指は巧に楽器の弦を爪弾き、音色はその楽器特有の空洞を利用して広がっていく。

エリノアの聴覚を通して、それが錯覚を呼ぶ。

そう、夢の中の―

「やれやれ、朝から災難だ。オレは仕事だってのに……」

少年がぶつくさ言いつつ、楽器をケースに仕舞う。

「あっ!」

そこで正気に戻った。

「ん?何だ、変な声出して」

「その音楽聴いた事あるわ……」

「―どこで?」

怪訝そうに少年は確信を問う。

「夢の中で」

きっぱりと、簡潔に。

「やってられっか」

即座に興味をなくし、少年は立ち上がった。

「ね、もう一回聴かせて?お願い♪」

まだ成熟しきっていない体を精一杯使ったアピールは―

「断る」

スルー。

「えー、いいじゃない、理不尽よー」

「理不尽なのはどっちか、頭の中を整理しろ」

「えーと……」

今朝のやり取りを振り返る。

「あ、私がワガママだったわね、ってあれ?」

首をあげた先に少年の姿は無く。

とっくに移動していた。

「ちょっと!」

「オレはこれから仕事なんだ!後にしてくれっ!」

言い訳と共に、少年は風となって消えた。

「うぅ~」

追いかけようかと思ったが、止めた。

「……」

あの音楽の余韻に浸りたくなったのだ。

まるで世界を包むような優しい旋律がエリノアの脳裏をゆっくりと、ゆっくりと満たしていく。

何時までも聴いて居たい様な、この世に二つとない美しい音楽だった。

少なくとも、また聴かずにはいられないのだが。

「さて、今日も修練修練」

とりあえず、日銭と汗を流すためエリノアも荷物を担いで街中へ向かうのだった。



「夢の中……まさかな」

エリノアが眠りについた後、ひっそりと楽器の練習をしていた事は少年と魚だけの秘密―



To be continued...
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Posted on 11:56 [edit]

category: MoE小説<現行作品>

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