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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2008

02/14

Thu.

ヴァレンタイン特別企画「誰かに捧げる秘密のマジナイ」 

最初に言っておく。

ダイアロスに、セントバレンタインなんて甘酸っぱいイベント概念は存在しない。

だが、パンデモスの女性は「ばいーん」と呼ばれたりするから、それはダイアロス7ふっしぎー7ふしぎー。



さて、作者に恋愛経験はない。

広義からすれば、あるといえないこともないが、特定の女性と恋愛関係になったことがないから無いのである。

これは、そんな作者が描く、なんだか苦くてしょっぱい物語―



一年ほど前の、あの日。

彼は、ビスク港のいつものベンチで、いつものギターを抱えつつ、

「甘い……。

 セルマ、頼むからもう少し物を選んで欲しいぜ……」

チョコを食べていた。

「何それ?」

私は、興味本位で尋ねてみた。

「ん?あぁ、もらったんだよ。エリノアも食べるか?つか、食え。食ってください。オレ一人じゃ食べきれないんだ……」

彼はめんどくさそうに答えてくれた。

「……なんでこんなにたくさんあるの?」

「そういうイベントだからな、断ったら後が怖い」

そう言った、彼の肩が若干震えていたのは気のせいだと思いたい。

「まぁ、あれだ。

 『バレンタイン』って言うんだがな―」

そして、彼は教えてくれた。

誰も知らない、恋のまじないを―



時は過ぎ、前述の会話をした日から一年。

ではなく、その3日前。

切れ長、釣り目のニューターの女が、シェフの格好をしたコグニートの男が営業している露店にいた。

「んで、Rexさん。頼めるかしら?」

迫力に満ちた眼が、シェフを見据える。

「えぇ、出来ますけど……。そんなのどうするんですか?」

頭の上に『?』マークを浮かべたシェフことRexは、注文の詳細をメモに纏めていく。

「んー、Rexさんになら喋ってもいいかしら」

うろ覚えだが、女は事の旨を話し始めた。

数分かけて話し終わると、シェフのコグニートは、優しそうな笑みを浮かべて、

「効いたことないイベントですけど、それは楽しそうですね。チョコもたくさん売れると思いますよ」

そう言った。否定も肯定もしないのは、やさしさか、信憑性があるからか。

「そのうち、バレンタイン用のトウフなんていうのも出てくるんじゃない?」

おふざけで、女が言った。

「トウフは甘くありませんよ」

苦笑しながら、Rexはメモを携帯式キッチンに貼り付けた。

「それじゃ、予定日の朝に取りに来るわ」

女は代金を置いて、席を立った。

時はもう夜更け。

「健闘を祈りますよ、ブリュンさん」

Rexは、営業スマイルを浮かべつつ、応援の言葉を告げるだけだった―



そして。

時は来た!

「むー」

鮮やかな紙と絹のリボンで美しく包装された箱を手にブリュン、ことブリュンヒルドはミーリム海岸にいた。

波打ち際に海水が寄せたり引いたり。

知り合いの『知り合い』が言うには、重力というものが働いていると教えてもらったが、ブリュンにとってはどうでもいいことだった。

「作ってもらったは良いけど……」

軽く揺らせば、中身が箱にぶつかってカコン、と音を立てる。

「あの人、来てくれるのかしら?」

約束のときまで、まだ何時間もある。

最近、実力株として各方面から引っ張りだこの彼がこんな小さな事に時間を割いてくれるとは到底思わなかった。

「ふぅ……」

ため息一つ。

足元にいたカニが、波に攫われていった。

「……」

空を見上げれば、真っ青で突き抜けていけそうな蒼天。

いっそのこと、何も考えなければ、事は楽になるのに。

そんなネガティブなことを思ってしまったかと思えば、

「でも、あの人だけに見てもらいたいなぁ……」

感情が空を埋め尽くす。

なんともいえない、筆舌に尽くしがたいその感情を。

誰かが、恋だと言った。

「恋、か……」

お昼過ぎになるまで、ブリュンヒルドはそんな風にボーっとしていた。



「―ブリュンじゃない。どうしたの?そんな辛気臭そうな顔して」

「エリー」

彼女に話しかけられるまで、どのくらいの時間がブリュンヒルドから消えていたか。

太陽の位置と、季節の関係から計算して、およそ5時間。

「ねぇ、エリー」

「何?」

「レンが言ってた、バレンタインのおまじないって、本当に効くの?」

「さぁ、おまじないってのは、私の思いつきだから」

となりに腰掛けたコグニートの女性は、あっけらかんと答えた。

要するに、彼女にもわからないのである。

所詮はまじない。

当たるも当たらぬも、相手次第というヤツで。

「今日、気になる人に、チョコレートを渡すと、その思いが結ばれる。か」

こんな小さなまじないで、本当に恋が結ばれた者はいるのだろうか?ブリュンヒルドは、ふとそんなことを思ってしまう。

不安、だから。

「少なくとも、思いは伝わるはずよ、あなたが、その人のことを、どう思っているかはね。

 ……レンには効いていなかったみたいだけど」

エリーこと、エリノアは、当時彼が浮かべていた苦笑を思い出して、同じように苦笑した。

「多分、切欠……なんじゃないかしら」

少し強い風が、エリノアの髪の毛を揺らす。彼女は、それを邪魔っ気そうに感じたのか、手で直した。

同性のブリュンヒルドには、それがひどく色っぽく、大人っぽく、それでいて、暗鬱そうに見えた。

「恋愛なんて、そうじゃない?一度走り出したら止まれないもの。破壊魔法と同じよ」

エリノアが、例えを出した。戦士であるブリュンヒルドには至極わかりやすい例えだ。

「ぶつかって、ダメージを与えるって言うのは、成功の証拠?」

つまり、思いが通じたと言うこと。

「マジックガードで吸収されたり範囲外に逃げられたら、それは失敗の証拠ね」

これは、通じなかったと言うこと。

「……」

しばらくの間、沈黙が生じた。

周りで、駆け出しの冒険者達が大ねずみ相手に四苦八苦している声さえも、二人に届かない。

「ほら、そろそろ時間じゃない?」

空が赤みを帯びる。

夕暮れ、約束の時間。

「ほら、ぶつかってきなさい」

エリノアが、ブリュンヒルドの肩をたたいた。

「うん……」

意を決して、ブリュンヒルドは立ち上がる。

ある意味、決戦に赴くような、そんな表情で。

「ブリュン」

別れ際、エリノアが一言。

「あなたらしいのが、一番よ。何だってね」

「―行って来るわ」



ビスク北西。

闘技場より東に存在するステージがある。

ガード達の姿は視界に無いし、その他人物も見当たらない。

「……」

赤は、更に濃くなっていく。

黄昏時、ってやつだ。

「そろそろ、待ち合わせの時間―」

一言つぶやいた。

それから、10分。

20分。

―一時間。

待ち人は、来ない。

「やっぱり、ね……」

「―ねさーん!」

立ち去ろうとした女の背中に、聞きたかった声。

今日、一番逢いたかった人の声。

「ブリュン姐(ねえ)さーん!」

「……」

幻聴かと思った。

「姐さーん!!」

「来た……」

振り返った先に、その姿を認めた瞬間。

ブリュンヒルドは、崩れるように蹲った。

「ごめんごめん、分配が思うようにいかなくてさ……、って姐さん?」

「遅いわよ……」

見えないように、袖で顔をぬぐって、ゆっくり立ち上がる。

暗いから、目が赤いのはばれないはずだと思いながら。

「んで、こんな時間にどうしたのさ?」

飄々と男は要件を問う。

これから大事なイベントだと言うのに、とブリュンヒルドは心の中でつぶやいたが、すぐにそれを訂正した。

そういえば、彼はレンのことを知らないのだから―

だとしたら、この様子を見る限り、『バレンタイン』のことも知らないだろう。

「んーとね……」

「?」

ごそごそと後ろ腰につけてある真っ黒な熊さんバッグから、包装された箱を取り出すと、

「これ、プレゼント」

見えているかは解らないが、いつもの微笑と共に、其れを差し出す。

「ありがとう……?でもどうしてこんないきなり?」

「えっと……それは……」

「ふむ」

なんともいえない数秒の沈黙。

「『今日』渡したかったから……」

それは正しくもあり、わからない人間には最上級の言い訳。

「別に俺、今日が誕生日って訳でもないんだけど?」

「今日じゃなきゃ意味が無いの!」

「そ、そうなんだ……」

男はいつもらしいブリュンヒルドの態度にいつもどおりたじたじ。

「ご、ごめんなさい……」

はっと我に帰って、詫びの言葉。

「いや、いいよ。気にしないで」

男はいつものことと、苦笑。

「でもね、少なくとも……『今日は特別』なの。だから、ね?」

上目遣いに、(男にとっては)会心の一撃。

「!!!!!!」

クリティカル。

「……開けていい?」

ダウン。

「……」

(暗いから気づかれていないが)顔を真っ赤にしながら、ブリュンヒルドは首肯した。

がさごそがさごそ。

「これって……あれ?」

中身を確かめて、男は呆然。

それは、ハート型のチョコレートと。

『大切なあなたへ』

という文字がブリュンヒルド本人によって書かれた瀟洒なデザインのメッセージカードだった。

「……」

とりあえず、男は渡した本人が消えたにも関わらず、しばらくその場から動けず。

「はは……」

真っ暗になった北西のステージの上で、そのメッセージカードを一生の宝物にしようと心に決めた―



「ハァ……ハァ……」

息が上がるまで走り続け、たどり着いたのはエリート一緒にいたミーリム海岸の浜辺。

今はさすがに駆け出し冒険者の姿は無い。

「―よぉ、クーデレニューター」

どこかで聞き覚えのある声が響いた。

およそ、一年振り。

「帰ってきたのね?」

出来るだけ平静を装い、返事。

声はまるで四方から聞こえてくるようで、真っ暗なので姿も確認できない。

だが、その声はリアルだと言うことはわかった。

「あー、帰ってきたと言うか、再び訪れた。というか」

細い声が苦笑を紡ぐ。

「エリーには逢った?」

「ん、これから会ってくる。まだ日は変わってないからな」

「責任取りなさいよ?」

「オレはなにもしてないさ」

悪びれもせず、声はそう返答した。

まぁ、確かに本人に自覚は無いだろうことは解っているが、それでもこの声の主は少しばかり自己中心というか、ゴーイングマイウェイな野郎過ぎた。

「……んで、私を笑いに来たの?」

これ以上言い合いをしても無駄なことを経験則から引っ張り出して、ブリュンヒルドは話題を変えた。

「んーや。少し、様子を見に来ただけさ。良い人生を送れてるか、どうかをな」

「見てのとおりよ、判断は任せるわ」

フン、と鼻を鳴らして、そっぽを向いてみせる。

「幸せそうじゃねぇか。損は無かったぜ」

「……そう、よね」

言い淀んで、俯く。

「不満なのか?」

「不満と言うか、不安と言うか……」

不安、と言うのが正しい。

思いはどうなったのだろうか?

彼は受け止めてくれるだろうか?

「んなもん、お前の手腕でどうにでもなるだろう?其れが例え、色恋だとしてもな」

「まったく、解った振りしてくれちゃって」

「解らなきゃ、言わないんだが……。

 これでも観察眼は人並みにあるんでな」

「その貴方から見て、私は―」

「あぁ」

「まったく、恋愛対象でもないのに、どうしてこんなに信用できるのかしらね」

腰に手を当てて、自分の性格にあきれ笑いを浮かべる。

「さぁな」

男の声が遠くなった。

「逢いに行くのね?」

「会いに行くんだ。彼氏と、仲良くやれよ?」

「余計なお世話よ」

お互いにからかいあって、少しの沈黙。

そよ風と共に、男の気配は闇の中に消えていった―



「ブリュンは上手くやったのかしら……」

ビスク港の海が眺められるベンチに腰掛けているエリノア。

今日は三日月だ。

星が良く見える。

「―」

不意に聴こえた懐かしい楽器の音。

「よっ」

いきなり後ろから声をかけられて、エリノアは驚きを隠さず、

「きゃっ?」

小さな悲鳴を上げた。

「―約束を果たしに来た」

「……バカ」



数日後―

「エリー」

「ブリュン」

「「彼とは、どうだった?」」

ビスク北西のステージ上にて、二人は同じ質問を掛け合った。

「ブリュンが先よ」

エリノアの表情は久しいとびきりの笑顔である。

「私?」

ブリュンヒルドは、無表情だったが―

「きっと、数十年もすれば伝説になるわ」

花のように可憐で、どこか雪のように切なげな絶世の微笑を創りだした―



「ちなみに、エリーはどうだったの?」

「―単に、約束を果たしてもらっただけ。うん、それだけ」

それでも、やはりその表情はブリュンヒルドのそれに、負けずとも劣らない美しき笑みだった。



それから数年の後。

色々と噂は一人歩きするが、「ばれんたいん」という名の『甘い伝説』がダイアロス中に広がっていくことを、二人はまだ知らない―

fin...
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