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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2009

04/23

Thu.

さよこい えくすてんど 外伝 

パネェっす!な恋が走り出すようです。
起の拳『恋する乙女は憧れの人に近付きたいようです』
「はぁ……」
時は夜。
思春期の乙女は一人、想いに耽る。
恋は盲目、等と言う言葉を授業で習った。
だとすれば、この想いは恋だというのだろうか?
初恋。
そんな甘酸っぱい響きが頭から体中を駆け巡り、息を切らしてまた頭へと戻ってくる。
想う事に疲れた少女は、ベッドにパタンと倒れこみ、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめた。
物言わぬぬいぐるみはチョークスリーパーを掛けられることで、少女の思いを受け止める。
尤も、答えを返すことはないが。
「お兄ちゃん、早く帰ってこないかなぁ」
呟いて、少女はぬいぐるみを壁に向かって投げつけた。
「また、あの人に会えるかも……」
そこはかとなく、甘酸っぱい想いを沸騰させながら。

所変わって。
静かな住宅地と違って、此処は繁華街。
まさしく眠らない夜の街。
喧騒渦巻く人ごみの中を、3人の若者が練り歩く。
「今日は酒がうめえ夜だなぁ!」
中央を歩くのはその当目的存在、名を曾我雄司という。当然未成年。
ちっちゃな頃から悪がきでー、というフレーズが板につくが、容姿はそれなりに端麗。それに15で不良と呼ばれていない。
言葉遣いと態度さえ直せば、そこら中から女性が寄ってきそうな感じである。
しかし、何故こんなになってしまったのかと言うと……それはもう本人は複雑だと思いながら、他人からすれば単純なトラウマがあるのだ。
彼が外伝の幕、その主人公……だと言っておこう。
「ゆーじさんの一気飲みは何時見ても爽快っすねぇ」
雄司の右側、若干千鳥足になりつつも、呂律はどうにか回っている男。
名は岩久保敬介。
読んで字の如く、人を敬い、間に入って仲裁するのが役割。
彼はそれを生きがいとしているし、雄司を敬い、助けられることが誇りだった。
「ゆーじふぁんの、大ひょっき滝流ひ、マジパニェえっす!」
そして、完全な千鳥足でふらふら蛇行しつつ、呂律の回らない声音で雄司を讃える彼。
「轟、お前酒強くないんだから少しは考えろよ……」
「れも、ゆーじふぁんの飲みっぷりがマヒパネェから俺も飲みらくなっちまうんれすよ……」
体質として酒に強い弱いがあり、更にアルコールへの耐性が付いて行くか、行かないかで区別すると。
彼―波根洲轟は、弱いし耐性も付き難い。
まったくもっての下戸である。
ちなみに雄司は上戸。
敬介は弱くはないが、人に飲ませて酔い潰させるのが得意。
「さて、11時か……」
雄司は携帯を手にして時間を確認。
夜はこれから。
毎日がサタデーナイトフィーバー、フォーエバー。
「うっ!」
そうも言ってられないのが一人。
「おろろろろろろろろろろろろ」
言葉だけで表現をお楽しみ下さい。
「きたねっ、せめて道の隅っこいけよ!」
口からの闇黒エレクトリカルパレードをとっさに回避し、敬介は轟を道の隅っこへ連れて行く。
「うぉろろろろろろろろろ」
じしゅきせいですごめんなさい。
「まったく……」
何やかんや言って、雄司は轟の事を気に入っている。
喧嘩はそれほど強くない。顔に迫力はあるが、言葉遣いのせいで威厳が出ない。
だが、自分を慕ってくれている。
雄司。
雄雄しく、司る。
一体どこで間違えたのか、彼は2人を従えるだけで燻っている。
それはまるで湿った薪の様。
「うぇっぷ、あれ? 11時っすか?」
はた、と轟が該当の時計に目をやった。
酔っ払っている為長針と短針が3倍の速さで動いているように見える。
「あ、そういやお前……」
11時と来て気付くこと。
轟家には門限があるのだ。
というか高校生と言う身分なら当たり前のような気もするが。
「ここから最速で帰って12時、間に合うな」
「そっすね。おら、轟! 走るぞっ!」
仲間の為なら、自分の娯楽は後回し。このような気遣いが雄司の慕われる理由と言っていいが、その気使いが振舞われるのはごく短い範囲だけであるため、中々伝わらない。
そして雄司自身がそれに気付かず行動しているので、伝わりにくい。
「ゆーじさんの気遣いはまじぱねぇっすぉろろろろろろろろ」
「吐きながら走るなァァァァァァ!」
繁華街に響く、間抜けながらビブラートの効いた良い声。
つくづく平和であることを、物語っていた――

「そういや、ゆーじさん」
電車にどうにか間に合い、轟をトイレに押し込んで。
ようやく一息。
「ぁんだ?」
電車が動き出したところで、敬介が話を切り出した。
「ゆーじさんは進路決めてるんすか?」
「そうだな……。俺じゃまず大学は無理だろうから、進学になるだろうよ」
「でもゆーじさん、1年の時の最初の期末テスト10位以内だった様な……」
「昔の事なんざ、気にしても何にもならねぇよ。今はテストを受けられるかどうかも怪しいっつの」
つまり蛮行が過ぎて、退学させられそうだと言う事。
「俺たち、いつまで――」
「明日を見ても、過去を見ても分からんものもわかんねえ。だから俺はその日だけを見て生きるんだ」
かっこいい美学だが、若気の至りに過ぎない。
「おや、若人達」
とそこに。
「ぁん?」
「こんな夜中に出歩いているとは、親御さんが悲しむよ?」
最近担任が病気の療養で入院したので、代わりにやってきた教師――渡瀬文嘉が、声を掛けてきた。
まだ夜は冷え込む為か、長袖のシャツにジーンズ、それとジャケットを羽織っている。
すらっとした肢体にラフな格好も良く似合う。
「てめぇにゃかんけーねぇだろ!」
敬介が食って掛かる。
この教師には先日一杯食わされた為、非情に腹が立っているのだ。
「そして酒臭い、ね。警察に連絡しておこう」
そう言って、携帯電話を取り出しぴぽぱと操作。
「待てコラっ!」
「敬介っ」
掴みかかろうとしたところを雄司が止めに入った。
「雄司さん、あなた今度捕まったら退学確実っすよ?」
「おい、先公」
雄司がすっと立ち上がった。
眼差しは真剣さを現すように鋭く、文嘉を真っ向から見据えていた。
「何?」
「こいつ等は俺が無理矢理誘って呑みに付き合せたんだ。悪いのは俺だけ、それでいいよな?」
「ちょ、ちょっと待っt」
「テェメェは黙ってろ!」
ビリビりと窓がしびれるほどの怒声。
何事かと他の客も様子を窺おうとする。
「いいじゃねぇか、これで学校クビになりゃ俺は自由だ」
「自由を求めるゆーじさんマジパネェっす!」
「二人って、そういうことね」
トイレから洩れ出た声に、納得。
「まぁ、今は仕事をしてるわけじゃないから注意だけってことにしてあげる。次からは気をつけなさい」
言うだけ言って携帯をポケットにねじ込み、文嘉は別の車両へと歩いていった。
「ちっ、つまんねぇ借りを作っちまったぜ……」
椅子に再び腰掛けてから、気に入らないと、舌打ち一つ。
電車が揺れる音が、今日はとても不快でならなかった。

轟の最寄り駅に着き、まだエレクトリカルパレードの収まらない彼を引っ張り出し、今度は駅のトイレへ。
「……あの先公」
「見かけの癖して中々あくどいッすね」
「だな」
「「……」」
夜の帳に溶け込むように、沈黙が訪れる。
「ふぅ。すっきりしたぜ」
そこに能天気にも轟が戻ってきた。
雰囲気ぶち壊し。
「いくぞ、轟。敬介」
「「うっす!」」
歩き出して数分後。
「おろろろろろろろろろ」
「「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉっ!」」

結局途中で轟がダウンしたので、雄司が担いで彼の家へ。
家の電気はまだ点いている。
こんな時間に失礼かもしれないが、インターホンを押さざるを得ない。
電子音が数回整ったリズムで家の中に響く。
「反応がねえな」
「そっすね」
もう一回。
もう一回。
「……」
開き戸の取っ手に手を掛ける。
「ん、開いてるみたいだな」
なら轟を玄関に帰ろうと決めて、戸を開く。
「おーにーいーちゃーん……?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
そんな擬音が似合う雰囲気を滾らせた少女が一人、ドアを開いてすぐの所に立っていた。
「お、丁度良いな。こいつをたのm」
「門限過ぎてる、お仕置きユミぱんちぃぃぃぃぃィィィィィィっ!!」
「ごぶろぁっ!?」
「あおぅふっ!」
KO! フィニッシュブロー…どてっ腹への右正拳突き。
ついでに轟が落下したが、気にしてはいけない。
「ゆーじさんっ!」
「……え?」
どうやら怒りのせいで鬼か何かに目覚めていたらしい少女は、ふと我に返ると、自分がしたことを把握した。
「あ、やっちゃった」
途端顔を真っ赤にして、顔を手で覆い隠す。
「遊子、お前ゆーじさんになんてパネェことを!」
「い、良いパンチだった……ぜ……」
曾我雄司、此処に眠る(勿論気絶的な意味で)
「どーします? けーすけさん」
「どーするもなにも、俺ゆーじさんの家しらねえ」
「ぱ、パネェことになっちまった」
どうするどうすると、頭を抱え全力で考え込む轟。
「ひとまずお前の部屋にでも寝かせて置け、起きれば帰るだろうしな」
答えは敬介から。
「それだ! マジパネェ良い考えだっ! んじゃ運んでおく」
吹っ飛んだままアスファルトを布団にして眠っている雄司をどっこいせ、と担ぐ。
意識を失った人間と言うのは、全身の筋肉が動いていない状態なので全体重が担ぐものに掛る。
要するに、重い。
休み休み玄関へ進み、とりあえず玄関に寝かせると。
「それじゃけーすけさん、また明日!」
「おう」
それぞれ軽く別れの言葉を交わし、敬介は踵を返す。
チラッとユミという子が会釈をしていた。
「礼儀正しい良い子だよな……。アレで血がつながってるとは思えねえ」
ユミが『マジパネェっす!』と瞳を輝かせながら言ってるのを想像して――
「似合うじゃねーか」
かわいいと思ってしまう敬介であった。

「おいしょ、おーいしょ」
ごつん、ごつん、ごづん。
「ぐっ、ごっ、がっ」
ごつん、ごつん、がつん。
「ぎっ、がっ、ぐぇっ!」
奇妙ながらやはり良い呻き声を響かせつつ。
轟は自分の部屋へ向かう為階段を登る。
「ゆーじさんの体重……マジパネェっす……!」
訳の分からない所を讃える轟。
一体何が彼をそうまでさせるのか。
「とにかく、パネェっす……」
作者にも、ましてや本人に分かるわけもない。
「……」
痛々しい惨状を見送り、部屋のドアが閉まった音を確認すると、ユミこと波根洲遊子も自分の部屋へ向かう。
雄司を起こさない為に(轟のせいで朝まで熟睡だろうが)ドアをそっと閉めて、鍵を掛ける。
「……」
一つ深呼吸をして。
「――!」
ベッドへランニングダイブ。
たまたまベッドに取り残されていたライオンのぬいぐるみが犠牲になった。
「ゆーじさん、かぁ……」
遊子はとある目論見を狙っていた。
だから今日はいつにも増して兄が帰ってくるのが待ち遠しくて、拳に入る力も大きかった。
まさか雄司本人に直撃するとは誤算だったが、怪我の功名と言うやつだ。
「予定とは違っちゃったけど……」
それなら、それで。
遊子は机に向かい、レポート容姿に何かを綴りだす。
試行錯誤の後、それが書きあがったのは、日が昇る直前の事だった。

朝。
と言っても、今から学校に向かったところで遅刻確定の時間。
「いててて」
背面部が痛い。
特に後頭部が。
目が覚めた雄司は、あちこちさすりながら、自分が何処にいるのかを確認。
「まーたか……」
3人で呑みにいくと、次の日は何故か決まって轟の部屋で目を覚ますのだ。
何時も玄関において帰ろうと戸を開いたところから記憶がまったくない。
「どうなってんだ、まったく」
寝起きの暗鬱な気分をニコチンの強い煙草で誤魔化す。
「Zzz」
ベッドでは轟がニヤケ面をしたまま爆睡中。
「……」
何となく気に入らないので。
「起ぉきぃろぉ……轟っ!」
全体重を掛けたフライングニードロップの目覚まし。
「あぶろへぇっ!?」
別の意味で意識が飛びそうだが、気にする事はない。
轟の唯一の長所は、打たれ強いこと。
それについて詳しいことは、また別の物語で描写させていただく。
「朝の目覚ましパネェっす……!」
「おら、学校いくぞ。さっさとしろ」
「はいっ、ゆーじさん」
轟が身支度を整える為、階段を転げ落ちる音を聞きつつ、雄司は残った煙草を味わう。
「ん?」
ふと人間の気配がした。もちろん轟の物ではない。
「!」
誰だか分からないが、部屋を覗いていたらしい。
知っている限り波根洲家の両親は共働きで妹が一人いる事。
ということは今の気配は妹だろうか、しかし何故まだ子の時間に家にいるのだろう。
「……」
気にしても仕方ないか、と紫煙を吐き出し、雄司はトイレへと向かっていった。
そして。
「準備はいいな?」
「うっす、準備パネェっす!」
やはり日本語になっていない日本語を背中に受け止めて、雄司は歩き出す。
つまらない、くだらない、しょうもない日常を蹴っ飛ばしたくても今一歩踏み出せない湿った薪は、今日も揺ら揺ら学校へ。
「……まじパニェ、パネェっす!」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
すぐ先の未来、薪に火は燈される。

『ゆーじさんへ、マジパネェっす! 波根洲遊子』

起の幕 了
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Posted on 08:30 [edit]

category: 小説<オリジナル>

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