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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2009

05/02

Sat.

さよこい えくすてんど 

第2章 2の幕「さよならで解れた心が、風によって再び紡がれるようです」




人は何かに依存して生きている。
それは、他人だったり、物だったり、はたまた生き方だったり。
ひょっとしたら自分に依存して生きている輩もいるかもしれない。
意識無意識の差はあるが、無いとは言わない。あくまで作者の経験上の話ではあるのだが……。
この物語の主人公、藤代耕平が依存している物は、前幕で軽く触れたがオンラインゲームである。
それもかなり重度の。
3日PCに触れないだけでいても立ってもいられなくなるというのだから、パソコン依存症も併発している可能性が高い。
今回はそんなお話を絡めてお送りさせていただく。

耕平は、日常の狭間に生まれる自由な時間を利用して依存に対する欲求を埋めている。
主に講義が無い時間である。
物足りないと思う事もあるが、家に帰れば続きが出来ると踏みとどまって耐える。
去年はそれが出来なかった。
これは彼が成長したと言う事になる。
朝起きて夜寝るまでほぼずっとPCの前から離れなかった時期に比べれば、の話で、今でも充分のめりこんでいる辺り笑えない。
「さーて、次の講義まで時間を潰すか……」
元はと言えば、本を読んだりテレビを見たりするのに飽きた時に始めたのがインターネット並びにオンラインゲームである。
深く入り込めば入り込むほどに、それに情報を求め、それらを大学で収集するようになっていた。さすがに大学内でゲームをやるもんじゃないと踏みとどまっているのは、良き事。
「今日はどんな記事が更新されてるかなーっと」
喜々としてそう呟きながら、共用コンピュータ室のドアを開く。
「あ、藤代先輩」
「お?」
「げ」
3者3様の反応。
「へ?」
耕平の事を先輩と呼ぶ後輩が身の回りに居ただろうか。
3秒で居ないと判断。
誰が読んだのやら、と顔を確かめてみる。
「加賀谷さん、それに時田さんに伴野さん」
「覚えててくれたんですね」
ゲーム内での習慣というか癖と言うか、人の顔と名前をおぼえるのは得意だった。
加賀屋咲は、嬉しそうに会釈をした。
時田佳奈美はお邪魔虫が来たといわんばかりの視線を向けて。
伴野棗は読めない表情で、同上。
「まぁ、ね」
君みたいな可愛い子たちの名前を忘れるわけが無いじゃないか。と言おうとしたが、あまりにも身に合わないセリフの為心の内にぶち込んでおく。ゲーム内でもそんなこそばゆい事を言った事は無い。
「そこのPCフィルターは解除された?」
先日の一件、後に助教授に掛け合ってインターネットのフィルターを解除してもらえる約束を取り付けた。
今日が会って2度目なのだが、どうやら約束はきっちり果たされていたらしい。
「でもネットからファイルをダウンロードできないのはそのままみたいですね」
「ウィルスとかスパイウェア拾ってこられても困るから、仕方ないと思う。その代わりCDとかリムーバブルディスクからは取り込めるはずだよ」
「あ、そうなんですか? なら家から色々持ってこようっと」
PCというのは使い慣れるほどに、自分好みへカスタマイズを求めるもの。
だからこそ、昨今の電子の海には様々なファイルが漂っている。
「でも使わないときはちゃんと隠しフォルダにでも入れておいたほうがいいよ。ソフトの種類によっては見つかると面倒だからさ」
「はい、気をつけます」
「んで、アンタもネットをやりにきたの?」
先輩に対する経緯(尤も耕平に先輩の威厳など欠片もないが)をまったく見せず、無愛想に尋ねる佳奈美。
「なみちゃん、先輩なんだからせめて敬語くらい……」
「いーのよっ! そもそもあんなヘタレを先輩だ何て呼びたくないっ」
「こりゃまた……」
手厳しいことで。
「まぁ、僕自身敬語は使われなれてないから、君達に任せるよ。好きに呼んでくれていいし、言葉遣いも気にしなくていいし」
「わたしはちゃんと敬語を使いますよー。先輩は先輩ですし」
人柄と言うのは、此処で顕著に現れる。
「アンタなんてヘタレで充分ね」
「藤代さん、ということにしておきます」
うむ、まったくもって皆違う。個性があっていい。
「あはは」
苦笑しながら椅子に腰掛、電源を入れようとしたとき――
「あ、先輩」
思い出したかのように咲が立ち上がり。
「どういうわけかネットが立ち上がらないんですよ~」
そして困ったような顔で、そう言った。
「え?」
「昨日までは、普通に立ち上がったのに……」
不思議そうな顔をして言うのは夏目。PCの知識が無い彼女は原因が判らないのだろう。
「アンタ何かやったんじゃないの?」
そして佳奈美に到っては最初から耕平を犯人だと決め付けている。棗と同じくPCの知識に乏しいとはいえ、少々言葉の牙が鋭い。
「僕は昨日此処に来ていないよ。一昨日は普通に繋がってたけど」
とりあえずPCの電源を入れて、起動するのを待つ。
「表示されないって、どんな感じなの?」
「ホームは立ち上がるんですけど、他のページにアクセスできないんです」
「となるとネットワークのケーブルが切れてるわけじゃ無さそうだね」
ケーブルが切れていればそもそもホームも表示されない。
ここの機器は新しくとも、ネットへの対応は少々遅れていて回線はADSL。
耕平の家は光回線で契約してある為、たまに送受信速度の遅さにイラつくこともあったり。
「ひょっとしたらサーバーが不調なのかもしれないな」
PCが立ち上がったので、同じくネットのブラウザを立ち上げてみる。確かにホームは表示されるが他のサイトにアクセス出来ない。
ホームへのアクセス速度も何時もより格段に遅かった。
「PCを使う授業が他の学科にあるのなら、誰かが回線を占有してる可能性もあると思う」
「どういうこと?」
「簡単に言うと動画を見てたりとか、複数人がネットのブラウザを何個も立ち上げてるとか、そんな感じ」
咲がフォローを加える。耕平ならよく解るが。
「よくわかんないけど……見れないものは見れないんだ」
渋々納得顔の佳奈美。よく解ってないらしい。
「交通渋滞と似たような感じ、でしょうか」
自己解釈に任せて、うんうんと頷くのは棗。凡そ間違ってない。
「帰りがてら助教授に聞いてみるよ」
もしこれが構内全域に渡っての事なら、結構な問題になりかねない。
「お願いしますっ」
何故だか、必死そうな表情で頼み込む咲。
理由が少しだけ気になったので、失礼だが――
「ひょっとして、伴野さんのため?」
「な、何で判ったんですか?」
正解の様だ。驚きあまり質問を返してしまう。
「勘と下手な推測だけど、初めて会った時伴野さんをネトゲに誘ってたじゃないか。その関連かなぁ、って」
以前の会話を思い出しての、拙い推理。
「アンタそんなとこまで聞いてるなんて意外と地獄耳……セクハラね!」
どこが。どうなって。そうなる。
「あれだけ大きな声で会話してれば、聞こえても不思議じゃないよ」
ナイスフォロー。と耕平は咲に心の中で礼を告げる。
「むぐっ……、ともかく頼んだからね!?」
むすっとした表情のまま佳奈美はさっさと荷物を纏めて部屋を去っていった。
「ありゃ、怒らせちゃった……かな」
「あの子人見知りが激しいから、それで離れていく子も多いんです」
友人、いや親友として佳奈美の短所を気に掛けているのだろう。
得てしてああいうタイプの人間と言うのは、仲がよくなってから出ないとその人の良さが解り難い。
だからこそ、分かり合えた時には絆が深いものになる。
「でも、本当は優しい良い子なんですよっ!」
力説する咲。棗も語りはしないが、肯定を意味する笑顔。
「君達のような子が言うなら間違いないだろうね」
「ですです」
「……それにしても、どうするの?」
相変わらず繋がらないインターネット。
「私の家、今日ネットに繋がる予定だけど」
「なら週末にでも佳奈美を家に呼んでみようよ、直接教えることも出来るでしょ? 私も咲がゲームをやってる所を見てみたいし……」
「ただPCの前に座って操作してるだけだよ~」
どんなことも、見方によればそれは芸術と例えられる。表現は自由だ。
「百聞は一見にしかず。ってことで」
「うー」
「ひょっとして、何か見られたくない理由でもあるの?」
棗は目を細めて追求に掛る。
「え? そ、そんなこと、ないよ?」
じっと見つめられて、咲の視線がそこらを泳いだのを確認すると、
「ダウトー」
どこか得意げに親指を突き出して、宣言。
「嘘をつけないんだね」
「……」
耕平に指摘されて、
咲は恥ずかしそうにもじもじと。
「素直って言い換えれば、問題ないよ」
表現と言うのは以下略。
「で、私達に直接教えられない理由を教えて?」
「なんていうか、ゲーム内だと人が変わっちゃうから……だよ」
「どういう意味?」
理由がはっきりしたのはいいが、意味が分からず棗は目を丸くした。
「藤代先輩なら分かるでしょうけど、リアルでの会話とゲーム内での会話って違うじゃないですか」
「え? まぁ、そういうこともあるかな。始めの内は敬語だろうし」
唐突に話を振られ、耕平は答えてから、疑問を抱く。
「って、何で僕がネトゲやってるのを知ってるの?」
「「……」」
2人は互いの顔を見合わせて、ただただ苦笑するばかり。
「……見た?」
耕平には思い当たる節がある。
インターネットの履歴を消去し、見られたくないファイルは隠しファイルに指定した……普段自分が使っているPC。
懸念していた事が、見事に成されていた。
「な、なみちゃんが、悪戯半分に茶化すから」
「秘密は覗く為にあるんですよ。男の人が女湯を覗くのと同じ摂理です」
1人は慌てて誤魔化し、もう1人は開き直って。どちらも本心だろう。
「18禁のファイルは入ってなかったのは、凄く残念でした」
何が。どうして。残念なのだろう。
「観念するしかないね……。まぁ、君達になら堂々と話せるけど、知っての通り僕もネトゲのプレイヤーだよ」
「同じネトゲをやっている人が居るなんて、世界は狭いです……」
「加賀谷さんもFTOを?」
FTOとは、フェアリーテイル・オンラインの略。
耕平がネットサーフィンをしている時に偶然宣伝を見て、絵柄を気に入り始めたタイトルだ。
基本は無料で、課金制度はアイテムだけに絞られており、お金を掛けずとも大概のアイテムがゲーム内の金銭でやり取りする事が出来る。
その為、色々な年齢層のプレイヤーが居る。
「はいっ!」
「偶然だなぁ……」
案外世間は狭いものだと、耕平は驚き半分嬉しさ半分。
「鯖※が同じだったら、どこかでお会いしているかもしれませんね」
「何処の鯖?」
「サファイアですよ、先輩は?」
「同じ」
「わぁ~」
きゃいきゃい。
その後しばらくの間、耕平と咲はFTO談義を交わした。
この時は同胞が居るという事実に浮かれていて、双方気付いていなかった。
もっと意外な、まるで誰かが手繰り寄せたかのような悪戯な真実があると言う事を。

咲と別れた耕平は、まず助教授の研究室に行き、トラブルがあるという旨を伝えた。
どうやら共用コンピュータ室のサーバにだけ異常が発生していたらしい。
修理には最低でも2~3日掛るらしい。
家のPCが壊れるよりは万倍、億倍マシ。我慢しなければならない。
図書室の資料を用いて課題を片付け、耕平が自宅に帰ってきたのは午後9時を過ぎた頃。
軽くシャワーを浴び、部屋着に着替えてから、PCの電源をつける。傍らにはコンビニで買ってきた夕食。
普段は自炊をしているのだが、今日はもうそんな気力が湧かなかった。
それでもネトゲをやる辺りが彼らしい。
「……」
まずは学校で出来なかった情報収集。
本当にざっと流し見て。
いざゲームにログイン。
以下『』はゲーム内での台詞。
『やぁ』
と、お決まりの挨拶。
なんだか朝昼晩の挨拶を使い分けるのが面倒になって以来、ずっとこれを定着させている。
耕平が操るのは、先日構想を固め終わったタンク、その見習いキャラだ。
成長度は目標の3割といった所。当然だが、勉学に精を出し始めてから効率が上がらない。
『ばんはー』
『こんばんわ~』
いくつか挨拶が帰ってくる中に。
『あれ、マイスさん。久しぶりー』
久しぶりに見た名前があったので、耕平は自然と笑みを零した。
『その挨拶、やっぱりマスター……?』
『正解』
『会いたかったですー!』
とAA(アスキーアート)を加えた、感激の言葉。
『しばらくインしてなかったから、何かあったんじゃないかと心配してた』
『すみません、受験とか一人暮らしの準備とか色々あってインできなくて……』
『ともかく、良かった。受験ってことは大学生?』
『Yes!キャンパスライフ!』
ゲーム上の性別で言う彼――その明るい性格は、耕平に心地よさを取り戻させた。
元はと言えば、ギルド創設当時から所属している古参メンバーだ。
戻ってきてくれた、と言う事だけで嬉しさがこみ上げる。
『やっとネットに繋がったので、今日から復帰! 遅れた分を取り戻さないとっ』
やはり明るい少年のような口調は、変わっていない。
『勉学も怠っちゃいけないよ。僕はやりすぎで留年しかけたんだからさ』
何時ものように自虐を挟むと、ギルドチャットに『www』の芝が生える。
そんな中で、彼は、
『あははっ、大丈夫大丈夫!』
と、2年前自分が言っていたのとほぼ同じ内容の台詞を表していたので、苦笑を浮かべてしまった。
まるで弟のような存在。
何だか……すごく安心した。
『それじゃ、僕も新キャラを作り始めたばかりだし、適当に流そうかな』
『ボクも操作を思い出したいから、マスターに付いてく! いいよねっ?』
きっとついてくるだろうと思ったが案の定。
『勿論だとも。他の人も、ついてきたいなら準備して城門前に集合ー』
そうして、何時ものように……いや、以前のような楽しい時を過ごし。
日が変わってすぐの事。
普段より早く眠気が回ってきた。
丁度明日も1限から講義がある為、眠る事にした。
『さて、眠いからそろそろ落ちるよ』
狩りを終え、分配を済ませたところで、ログアウトする旨を伝える。
『えー? 以前までは「朝までコースだ!」なんて言ってたマスターが!?』
『これでも留年しかけてからは、反省して真面目に勉強してるんだけど』
『マスター偉い! じゃあボクもそれを見習って、今日はもう落ちるね』
『おつかれー、また明日』
『おつかれさまー』
と、最期に挨拶を交わして、充実した気分のまま耕平はログアウトした。
「そう、か……。また一緒に遊べるんだよな」
嬉しさとまどろみに呑まれて、耕平は複数起きた偶然の奇跡的な合致に気がつかないまま、眠りへと堕ちていった。
尤もそれは。
「やっぱりマスターと遊ぶのは楽しい……。明日も、明後日も、ずっと――」
耕平とは違う視点から叶わぬ恋路を歩んでいた咲も、気づいていなかったのだが。
ただ、胸に残る充実感のみが今の二人に在る現実。

第2章 2の幕 了

※サーバーのこと
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category: 小説<オリジナル>

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