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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2009

05/11

Mon.

さよこい えくすてんど 

第2章 3の幕 「さよならを引きずる若人の冒険、のようです」


「……」
有り体に言って、その日藤代耕平は暇を持て余していた。
共用コンピュータ室のサーバー修理が始まって3日が経とうとしている、そんな昼の事。
「どうするかなぁ」
耕平にとってPCとはインターネットをする為の機械に過ぎない。
他にもやれることはあるが、彼の趣味には関係しない極々限られたこと。
そもそも、その限られたことも既に終わらせていた。
彼自身は気付いていないが、確実に勉学の知識を深めているという証拠。
課題を出された次の日にレポートを提出したら、担当講師がショックで倒れてしまったくらいだから、2重の意味で説得力がある。
昼食の時間は、睦美と他愛ない会話をして。
咲たちとも、軽い雑談を交わせる間柄になった。
ちなみに、咲たちも大学内では可愛い3人組として既に名が広まりつつあった。咲と佳奈美は若干迷惑そうだったが、棗だけはまんざらでも無さそうな表情をしていたのを覚えている。
そしてやはり、その彼女等と会話をしている耕平には、突き刺さるような視線が寄せられていたり。
ここで考えるに――
どうやら、耕平は人恋しさと言うものに気付かされたらしい。
即ち、会話をするということ、コミュニケーションをとることの大切さ。
画面を介したそれと違い、相手の顔を見ながら話すのはとても気苦労させられる。
けれど、楽しかった。
そんなこんなで、無意識に会話相手を求め、耕平はふらふらと。
「散歩でも行こう……」
大学の外へ足を向けるのだった。

思えば、大学の外、それも知らない場所を何のアテもなしに歩くのは中学生……いや小学生以来だ。
春の陽気を浴びつつ、耕平はそんな事を思い出した。
元から内気な彼である。
となれば当然行動範囲は狭くなるわけで。
今は本当に最低限だ。
逆に言うと、その最低限から一歩外へ踏み出したことになる。
きっかけはともかくとして、ちょっと誇らしくなった。
そんないい気分のまま歩くこと半時間。
耕平の行く先に一軒の建物が見えた。
明らかに民家とは違うその様相が気になり、少しだけ歩くペースを速める。
「喫茶『エリュシオン』……?」
チョコレート色の看板に、流れるような白色の文字が躍っていた。
駐車場は無く、さしずめ奥様の憩いの場といった所だろうか。
その奥様達もこの時間はドラマに夢中だろうと踏んで。
耕平は喫茶店のドアを開いた。
「やぁ、いらっしゃい。ようこそ喫茶エリュシオンへ」
どこからか来客を迎えた声は、穏やかで緊張していた彼を若干落ち着かせた。
「……」
店内は、モダンなテーブルが3台。店主と向き合うカウンター席には椅子が5つ据え付けられていた。
飾られている絵や陶器は、その手の知識を持たない耕平にも高価だと言うことだけはわかった。
「何処でも好きなところに座ってくれて構わないよ。悲しいかなこの時間は閑古鳥が鳴いているんだ」
「あ、はい」
とりあえず、外の景色が見える窓際へ。
「とりあえず、お冷とお絞りっと」
不自然なリズムで木床の軋む音。人が歩く時に立てるそれとは、全然違う。
店内が静かだから余計に気になってしまった彼は、音の方へ向き直った。
「すみません、カウンターに移動しますね」
店主は片腕に水の入ったグラスと棒状になったお絞りの乗ったトレイを持ち、もう片腕は車椅子のホイールに手を掛け若干ぎこちなく進んでいた。
よく見てみると、彼のズボンからは右足が出ていなかった。
「すまないね、何時もなら接客は妻がするんだけどタイミング悪く買出しに出かけているんだ」
中年に到ってはいないだろうが、しょぼくれた眉毛が老けた雰囲気を醸し出している、そんな男性。
おせっかいながらトレイもひったくって、そのままカウンターへ向かう。
とても柔和な笑顔を浮かべつつ、彼はカウンターへともゆっくり戻ってきた。
「どうぞ」
空になったトレイと入れ替わりに、冊子を手渡された。
拍子にmenuと書いてある。
そのまんまだ。
「どうも……」
メニューを開いた瞬間、耕平はある事に気付いた。
お財布の中身が頷いてくれるかどうか。
所詮は暇を持て余した末偶然訪れただけの、しがない貧乏学生である。
出来れば良心的な価格であることを祈って、値段を眺める。
「店主さん」
「何だい?」
「ちょっと、安すぎませんか?」
この値段で店に利益は出るのだろうか?
缶コーヒー1本を飲むより、こっちの方がずっとお得だと断言できるほど。
確かに、まだ懸念材料が無いわけじゃないが。
「ははは、常連にもよく言われるよ。この店は趣味でやっていてね。それに系列店もあるしね。此処は第3支店」
「なるほど」
薄利多売の極意でも知っているのだろう。
恐らく、経済学者が目を回してひっくり返るレベルの。
「ここはその趣味の方面を追求した店なんだ。利益とかは考えてないよ」
だから内装がこんなに豪華なのか、と納得。
「はぁ……」
「注文は決まったかな?」
待ちわびるような視線。
流石に何も注文せず帰るわけにも行かないので。
「それじゃあ、アイスコーヒーとパンケーキのセットを」
今日だけは特別。ちょっと遅いがデザートの扱いだ。
「ちょっと、待っててね」
どうやらパンケーキは生地を焼くところから始めるらしい。
「油を引いてっと、熱っ!」
寝かせておいた生地を、熱したフライパンの上に流し込み、待つ。
待つ。
待つ。
「……」
まだ待つ。
まだまだ待つ。
「そろそろかな」
そう言ってフライ返しを取り出し、焼く面を変えてみると。
「焦げちゃったな。失敗だ」
大丈夫だろうか、この店主。
「やってるー?」
とそこに新たな客。
どこかで聞いた覚えのある声だ。
耕平は入り口の方へ振り返ると――
「おや、何時かの若人じゃない。久しぶりね」
そう言って、渡瀬文嘉は微笑を浮かべた。
「また授業をサボったのかい?」
「自主学習って言って。私が教えられることは無いみたいだし」
颯爽とカウンター席へ向かい、耕平の隣へ腰掛ける。
以前と同じ、どこか落ち着くような香りが耕平の鼻腔を刺激した。
「あ、あの」
「何?」
射抜くような視線が耕平を捉える。
睦美とも、咲とも違う、その少々威圧的ながら艶かしい輝きを放つ瞳は耕平をドギマギさせるには充分すぎた。
「おひさし……ぶり、ですね」
「2週間程度じゃお久しぶり、じゃないわね。こんにちわ、えーっと……フジノミヤ君だったかしら?」
フジ、しかあってない。
「藤代です」
「あ、そうだった。ごめんなさい」
「文嘉、そこ彼と知り合い?」
どうやら常連とは、文嘉のことだろう。
「この前ちょっと男の子らしいところを見せてもらったの。あの行動は痺れちゃったわ」
そう言って、ウィンク。
「いや、あれは単に――」
詳しくは第1章3の幕を参考の事。
「細かいことは気にしちゃ駄目。幸せを取りこぼすわよ?」
「はぁ……」
何とも掴めない女性である。
「で、ベネットさん。奥さんは居ないの?」
「ドロシーなら買い出しだよ」
2度目のパンケーキ焼きに挑戦中の店主ことベネットは振り返らず答えた。
どうやら焼くことに集中したいらしい。
「慣れない事はしないほうが良いと思うけど」
「今日こそっ」
べちゃ。
読者諸兄ならどういう結果に相成ったかはお察しだろう。
「ほんと、コーヒーを淹れるのは上手なのにどうしてこう料理が駄目なのかしら」
やれやれ、といわんばかりに首を振り、文嘉が立ち上がった。
「いつから居るのかわからないけど、藤代君の為よ。替わって頂戴」
「君、料理できたの?」
何とも意外そうにベネットが問う。
彼女は通算三度目となる生地をフライパンに流し込みつつ、
「最近始めたばかりだけど、パンケーキくらいならお茶の子さいさいよ」
「期待させてもらうよ」
苦笑交じりに、ベネットは車椅子の背もたれに身体を預けた。
彼のような身体を持つもののためにキッチンはいろいろと工夫されているが、それでもやはり体力は使うらしい。
再び待つ。
待つ。
待つったら待つ。
「いくわよー」
フライ返しを持ち
べちゃん。
じゅう。
「あちちちちちちちちちち」
何故かパンケーキは、綺麗に耕平の顔へ着弾。
問題外。
「ただいまー」
そこへ、女性が一人。
「……随分騒がしいようだけど、何してるの?」
煌びやかな金髪と切れ長の目が印象的な、文嘉にも負けない美しい容姿だ。
外国の方だろうか。
その割りには随分と日本語が流暢で驚いた。
やはり日本人らしからぬ容姿が原因か、ベネットは髪の色が茶色で違和感を抱かなかっただけなのかもしれない。
暮らす世界は狭いながらも国際社会の昨今なのだから。
「おかえり、ドロシー」
耕平の感は正解らしい。
「お邪魔してるわ」
「どうも……」
冷たいお絞りはとても心地よく、熱せられた耕平の顔を冷ます。
「あら、珍しいわね。この時間にお客さんだなんて」
ドロシーと呼ばれた女性は、耕平の顔と周りを一瞥して、
「ご注文はパンケーキみたいね。ベネット、コーヒーは任せるわ。文嘉はさっさと座って待ってなさい」
「やっぱり、役割分担は必要だね」
「練習が足りなかったわ」
そんな事を呟きながら、ベネットはコーヒー豆の入った瓶を取り出した。
「掃除するほうの身にもなって頂戴……」
ドロシーの声音が少々鋭くなった。
「「ごめんなさい」」
途端、しっかり謝る二人。
見た目に合う、というかドロシーを怒らせたら怖いのだろう。
「すぐ作るから、待たせてごめんなさい」

そんなこんなで。
「おまたせ、アイスコーヒーとパンケーキのセットだよ」
氷が浮かぶ、澄んだ黒の液体。
白色のアイスクリームとミントが添えられた2枚のパンケーキ。
見た目からしてまず美味しそうだ。
「相変わらず美味しそうね。ね、一枚貰っていいかしら?」
「客として来ているなら注文してくれないかな……」
そんな会話を右から左に受け流しつつ、
「いただきます」
まずはコーヒーにミルクと砂糖を加えようとして、
「あ、ちょっと」
ベネットに止められた。
「え?」
「出来れば、最初の一口はブラックで味わって欲しいんだ。無理にとは言わないけどね」
「はぁ」
ブラックは飲めない事も無い。
ベネットがあまりにも自信に満ちた表情でそんな事を言うものだから、逆らうのは失礼だろう。
というわけで、何も淹れないままグラスを傾ける。
「美味しい、ですね」
口の中に広がる、コーヒー独特の苦味と酸味。
しかし奥からあふれ出る仄かな甘み、全てが自然と耕平の口から感想となって洩れた。
「時間を掛けてブレンドした自信作。巧くいかない事もあるから、普段はあまり店に出さないんだけど、今回は迷惑を掛けてしまったお詫びの代わりだよ」
「ありがとうございます、僕何かのために。貴重なブレンドを」
「パンケーキもどうぞ」
ドロシーに言われるがまま、出来たてパンケーキの熱によってアイスが溶け掛った部分を切り取り、フォークで口に運ぶ。
「……」
今まで何度と無くパンケーキを口にしたが、これはまるで次元が違った。
表面は絶妙な焼き加減によりサクッと。
そして中はもっちり。
生地そのものの優しい甘みと、アイスクリームのしつこくない甘さが合わさることで、今まで味わった甘味としてはぶっちぎりの美味しさを叩き出している。
「小麦粉から拘ったパンケーキよ。感想は顔を見れば解るわ」
ほっぺたが落ちそう、とはこんな事を言うのだと耕平は悟った。
今までスイーツを馬鹿にしていた自分が恥ずかしい。
急がずゆっくりと、まるで時の流れそのものまで鈍くしてしまうような錯覚に囚われながら、じっくりとそれらを吟味した。

「篠崎さん達にも教えてあげたいなぁ」
食べ終わった後、耕平はこの感動を友人(と呼んでいいのか判らないが)にも伝えたいと思った。
特に女性ならば、この手のスイーツに眼がないだろう。
「お客さんが増えてくれるなら、歓迎するよ」
「私の静かな時間はどうなるの?」
不満そうに口を挟む文嘉。
「文嘉は客としてきてないじゃない」
釘を刺したのは後片付けに勤しむドロシーだった。
「じゃあ今度から何か注文するから」
「それ5回くらい聞いたけど、まだ何も注文してくれてないよね」
「……」
やっぱりか、と耕平は苦笑するばかり。
「まぁ、藤代君の『友人』達が喧しくしないなら、構わないけれど」
それでもやはり自分の時間は譲らない、ということらしい。
せめて客の身分になってから言うべきなのは、突っ込むまでも無いが。
「多分、大丈夫ですよ」
若干1名(耕平に対して)喧しいのはいるが、この場をやり包める為には伏せておくのが正解。
「……げ」
ふと時計を見てみると、次の講義の時間が差し迫っていた。
「えーと、講義が始まりそうなんで行きますね」
慌てながら財布からお札を一枚取り出し、カウンターの上へ。
「頑張りなさい若人、この国の、世界の未来は貴方に委ねられているんだから」
文嘉が大仰にそんな事を言う。
「そんなたいした事は出来ませんよ。僕ですから」
自分でも訳のわからぬ弁明をして、耕平は店を出た。
「御釣りー!」
ベネットが何か言っていたが、当に耳には入らない距離に。
喫茶エリュシオン。
その名の如く楽園と呼べるこの場所に、また来ようという思いを胸に秘めて。

第2章 3の幕 了




「こんな世界のこんな時代にも、ああいう子は居るんだね」
「ちょっとヘタレだけど。心は強いわ。ベネットさん、コーヒーお願い」
耕平のいなくなったエリュシオン内。
「はいはい」
そこに、来客を告げる鈴の音。
「……あんたは教員としての自覚が無いんじゃないか?」
やってきたのは、艶のない黒髪を中途半端に伸ばした青年。
容姿は無駄に整っているものの、眼差しにやる気や生気を感じられない、そんな奴。
文嘉の姿を確認するなり、彼はそう言った。
「この世界での身分なんだろう? しっかりしろよ」
「あんたに言われたくないわ」
この場合、どっちもどっち。
何故かはいずれ明らかとなろう。
少なくとも、今はその時ではない。
「休暇かい?」
ベネットが少年に問い掛ける。
「いや、仕事だ」
さもめんどくさそうに、少年は答えを述べた。
「――魔力絡みの、な」

It advances to another story...
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