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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2009

05/18

Mon.

さよがたり 第1部 

第3章 1の幕 「さよならが残した儚い想いのようです」


最近は狂ったほどに運がいい。
幾人もの女性(しかも全員容姿に優れている)と会話が出来るようになったり、料理とコーヒーの美味しい喫茶店を見つけたり。
「……」
しかし、それでも藤代耕平の気分が晴れることは無かった。
浮かぶのは、虚像の世界の中で共に過ごした、あの人の事。
考えれば考えるほど、ドツボにはまっていく。
ついでに。
「だーわかんない!」
もうすぐ試験なのである。
ネトゲをやる時間を削り、勉学の為の時間を増やしているが、一向に頭に入らない。
集中できないときは、何をやっても駄目。
経験則から、そう理解した。
とはいえ、此処は大学構内。
ネトゲをする事は出来ない。
今すぐ家に帰りたい衝動に駆られる中、
「あれ、藤代君? どうしたの?」
頭を抱え悶々としている姿を、篠崎睦美がきょとんとした眼差しで眺めていた。
「……」
今度は恥ずかしさで顔が真っ赤になった。

場所を、何時も昼食を食べる中庭に移し。
ベンチに腰掛けて、空を見上げる。
初夏に相応しいまっさらな晴天、そよ風がなんとも気持ちいい。
「誘惑、かぁ」
そして、目下の悩みを睦美に打ち明けた。
「篠崎さんは、誘惑に駆られたりしない?」
「たまにあるよ。今は試験に向けて集中してるけど、試験が終わったら色々開放的になっちゃいそう」
彼女の言う開放的がどんな意味なのかはともかく。
「今は試験に集中しなきゃだめだよ? 折角教授の評価が上がってきてるんだから、正念場じゃない」
「ですよねー……」
彼女のエールを受けても、気が入らないのかゲーム内での口癖を漏らす。
「ねぇ」
「ひょっとして、何か悩んでる? ゲームの事じゃなくて」
「あ、いや」
思いっきりゲームの関連である。
とは言っても、ゲーム内容の事ではないのだが。
「……悩んでます」
自愛に満ちた笑顔に気圧されて、白状。
「私でよければ、聞いてあげる」
「なんと言うか、その、うーん」
「その代わり――」
困っているところに、睦美が付け足す。
「私の悩み……ううん、引っ掛かりも聞いてくれる?」

更に場所を移すことにした。
只でさえ、中庭は視線が激しかったのだ。
既に、勘違いされてしまっているのだろうか。
悪い気はしないが、罪悪感がある。
そもそも、どうして僕なんだろうなぁ、と喫茶エリュシオンへ向かう道の中で考える。
こうやって話すようになったきっかけは偶然ながらも些細な事。
その時に何か特別な事をした訳じゃない。
自分の何に興味を持ってくれたのか。
ただ、ほんの少しだけ皆が知らない篠崎睦美と言う人間を知っている程度。
幾ら同じ興味のベクトルを持っているだけとはいえ、此処まで人に気を許すだろうか?
いまいち、解らなかった。
「――ここがそう」
以前来た時と変わらない、チョコレート色の下地に白色の文字が彩られた看板。
「こんにちわー」
「やぁ。ようこそ、って君か。いらっしゃい」
カウンターの向こうでグラスを磨いていた店主ベネットは、耕平の顔を見るとやはり以前と変わらぬ柔和な笑みを浮かべて来客を歓迎した。
「おしゃれ……」
睦美は耕平の前に躍り出て、店の内装をぐるりと見渡す。
気に入った模様だ。
「彼女さんかい?」
ベネットは車椅子の挙動とは思えないような素早さで耕平の元へ来ると、そう呟いた。
「ち、違いますよっ」
慌てて否定。
もし彼女だったら天に昇るほど嬉しいが、ある意味本当に昇天させられかねない。
「いらっしゃーい。あら、彼女連れなんて青春してるわね」
キッチンの置くから出てきた女性が、ベネットの行動を根本から駄目にした。
「ドロシー……」
こりゃだめだ、とベネットはしょぼくれ気味な眉毛を更にしょぼくれさせた。
「いえ、学友ですよ。美味しいスイーツが食べられるって言うんで、付いてきちゃいました」
そこはかとなく否定する睦美。杞憂だったようだ。
これはこれで悲しい気はするが。
「何処に座る?」
アンティークらしき人形に眼を輝かせながら、睦美が問う。
「好きなところでいいよ」
「それじゃあ、こっち」
そこはアンティーク人形が丁度いい角度で眺められるテーブル席、ベネットたちからも離れていて話をするには絶好の場所だった。
「はい、メニュー」
ドロシーはなぜか爛々とした瞳で、お冷とお絞り、そしてメニューを置くとすたこらさっさとカウンターの向こうへ戻っていった。
間違いなく、勘違いしている。
「何か……頼もうか」
仕送りが届いたばかりで、今は懐に若干の温かみがある。
この店の安さなら人1人分奢ることぐらい、訳はなかった。
「はいはーい、ご注文は?」
最早キャラが違うぞ、ドロシーよ。
「私はカフェラテと苺のミルフィーユを」
「んじゃあ僕は……」
メニューで顔を隠しながら、ベネットの様子を窺い見る。
「……」
次にドロシー。
「この前と同じ、アイスコーヒーとパンケーキで」
「かしこまりました~」
調査結果、どっちも興味津々。
そりゃあ片や冴えない普通の大学生。
もう片方は、待ち行く人の殆どが振り返るほどの美人。
こんな組み合わせ、普通は釣り合う筈も無く。
「藤代君は、常連さん?」
「いや、実は2回目なんだ」
「でも随分店主さんと仲が良さそうだったけど」
「色々あってね……」
思い出したくは無かったが、とある女性が来ない事を祈るばかり。
「藤代君って、話してみると意外と人を惹き付ける魅力があると思うよ」
「そんなことはないよ、すぐに緊張するし」
特に睦美のようなのが相手では、尚更。
「そうかなぁ」
「僕がそう思うんだから間違いない」
何となく胸を張ってみる。まったく偉そうに見えなかった。
「それで、教えてくれる? 悩み事」
グラスに入っていた氷がカラン、と音を立てて水の中に沈んでいった。
「僕は――」

単刀直入に言って、その人の事が好きだったんだと思う。
男性でも女性でも、どちらにせよいい関係になれるような、そんな人が画面の向こう側にいると思ってたんだ。
男性か女性かもわからないし、人生の長さに比べたら全然短い付き合いだった。
けど、その人と一緒に冒険するのが、話をするのが、とても楽しかった。
今でも、忘れられないんだ。
篠崎さん。
この感情は、不透明でも恋と言っていいのかなぁ。
僕には……解らないんだ。

出会いから、別れまで要約はしたが全て語った。
話し終わったと同時に、喉の渇きを感じ、グラスに手を伸ばし中身を一気に飲み干した。
口腔から染み渡っていく水は、彼の頭をも冷やし、状況を冷静に判断させる。
彼女の表情は、穏やかだった。
何を思っているのか、どんな答えが返ってくるのか。
もう話してしまったのだ。後悔はすまい。
「立派な、恋だと思うよ」
そのままの表情で、睦美は語る。
「人を好きになる、ってそう言う事だと思う。
この人ともっと一緒にいたい。この人の事をもっと知りたい。話したい。それが積もって行く事で、恋に……愛に、なるんじゃないかな」
酷く純粋な想いだった。
健全な男であれど、横に逸れる事は無く、ただその人を想い続けた。
「答えになるか解らないけど、私はこれくらいしか言えないの。私も……恋を知らないから」
意外と言うべきか。
いや、何となく想像はついていた。
完璧であるが故の、相手を慕う気持ちの欠落。
だから誰にでも優しく、されど誰かが傍にいるわけでもなく。
全てを大切にする事で、何が本当に大切なのか解らなくなってしまった。
哀れだが、慈しみに溢れた、そんな悲しい悩み。
「次は……私だね」

何にも解らなかった。
初めて触れた世界は、想像よりもずっと複雑で。
まるで暗闇の中を歩いてる気分。
そこに誰かが手を差し伸べてくれた。
赤子のような私を、頑張れ、頑張れ、って助けてくれた。
悔しかったのかな、それとも嬉しかったのかな。
今でも解らない。
でも、とてもワクワクしたの。自分の知らない世界で、自分を知らない世界なら、助けてくれる人が居るんだって知ったから。
それから、もう一度その人に逢いたくて、けど今のままじゃ駄目だって思って。
所詮は娯楽だって思ってた私はもう居なかった。
再び彼に会った時の反応、例え画面の向こうでもその人がビックリしてるって判った。
それで、また色々と教えて貰って。
彼は私を自分の仲間に入ってくれ、と言ってくれた。
いつだって勝手に誰かがついてきてくれた私を、仲間に迎え入れてくれたの。
その時位かな。
私も同じ。
彼ともっと冒険したい。彼ともっと話したい。彼の事をもっと知りたい。
私のことは聞かれる度、恥ずかしくてはぐらかしちゃってたけど……。
とても楽しかった。
だから、お別れなんだって思った時、どうしようもなくて。
藤代君には解る?
この気持ちが何なのか――

気がつけば、睦美は涙を零していた。
宝石のような輝きを放つ雫は重力に従い落下し、膝の上に置いた手にぶつかって、弾けた。
「……篠崎さんが僕に言った言葉が正しいなら。それは恋だと思うよ」
お互いが、お互い。
虚像の世界の中、ひたすらに実らぬ恋を膨らませて。
今、打ち明けることで飽和した想いが弾けた。
「ねぇ」
「何?」
「藤代君が大学で使ってるPCの壁紙。あれってフェアリーテイルオンラインのキャラでしょ?」
今でも覚えている。
彼がチャットの中で『私』のスクリーンショットを壁紙にした、ということ。
「そう、だよ」
「キャラの名前は、クラリッサ。スペルでClarissa」
一文字ずつ、ローマ字を読み上げられる毎に。
耕平の表情が歪んでいく。
また涙が、溢れてきたらしい。
「まさか……」
それでも、睦美は精一杯の笑顔を浮かべ。
「貴方は、私が探していた人ですか?」
ぎこちない言葉を連ねて、送り出す。
「君が探していたのは――」
弾けた想いは、互いを知ることで一つとなり。
邂逅の喜びを知る。

「いつ頃から気づいてたの?」
夕暮れ。
大学への道を二人で歩く。
講義なんて、もうどうでもよかった。
せめて今だけは、忘れさせて欲しい。
「確信したのは『私』の壁紙を見た時かな、驚いちゃった」
睦美が振る右手に同調して、耕平の左手が揺れる。
「気付いてなかったのは、僕だけか……」
「何となくね。耕平君に面影を見たの」
「そんなことはないと思うけど」
確かに、妙なフェミニズムを働かせた結果、彼女に話しかけることが出来たのだが。
それが良い結果を呼んだとは思えるはずもなく。
「私には見えたの!」
「……」
「信じてない? 折角こうして回り逢えたのに」
睦美は耕平の前に回りこみ、まだ少し赤い眼で耕平を射貫く。
「少なくとも、今は見えるよ」
虚像の世界の中。
何処までも続いているんじゃないかと思う草原に立つ『彼女』の面影が、睦美に被る。
「やっぱり、綺麗だ」
彼女は、自分を選んでくれた。
「ありがとう」
この『自分』は頼り甲斐は無いけれど、せめて彼女に並べるような存在になりたいと、耕平は願った。
「睦美さん」
「何?」
「もし良かったら、戻ってきてくれないかな?」
この僕は虚像の世界の中に生きる『自分』の様に強くないけど。
「いいけど」
「けど……?」
こんなに美しい彼女と一緒にいる事を許されるのならば。
「勉強も大事だよ。試験、頑張らなきゃ」
「努力、するよ」
出来る限り、動かねばいけないだろう。

虚像と実像。
影が重なり、想いは繋がった。
光を湛えた想いはまっすぐにゆっくりと進み始める。

さよならから始まる恋があるようです
1の幕「さよならが繋いだ儚い想いのようです」
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Posted on 16:19 [edit]

category: 小説<オリジナル>

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2009

05/18

Mon.

18:59

Akaih #C9cZikNU | URL | edit

ボキャ貧は辛いが言いたい
とても面白いです、と
後輩とか女教師とか複線あるようですが続くんですかね?
あと番外の続きが楽しみです

 

2009

05/23

Sat.

14:40

0距離砲撃 #- | URL | edit

噂を聞いて遊びに来ました。
自分のブログの方からここへのリンク飛ばしてもよろしいでしょうか?

 

2009

05/24

Sun.

19:10

WEEZER #- | URL | edit

外伝「2章」執筆中

いらっしゃい赤い人。

> あと番外の続きが楽しみです

後は投稿するだけなんだぜ……。

まともに返信するの久しぶりだなwwwww
まぁいいやwwwwww
さーせんorz

 

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