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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2009

05/30

Sat.

さよがたり 外伝 

第3章 「恋する乙女は、大きな心を受け止める小さな太陽になれるようです」


「……」
曾我雄司が目を覚ました場所は、
「轟の家じゃねえか」
もう大概見慣れた部屋である。
首だけを動かして風景を確認してみれば……、
中途半端に燃えた煙草の吸殻がたっぷり詰っている灰皿。
呑みかけの焼酎が入っている瓶。
恐らく万年床とかしているだろうベッド。
格闘技の雑誌が数冊。
「俺はどうしてここにいるんだ?」
今までは轟の家で目が覚めると、それ以前の記憶は飛んでいた。
しかし、今回はしっかりと覚えている。
自分がやっていた事と、何故気を失ったのか。
認めたくはない事だが、轟の妹遊子の細腕により意識を飛ばされたのだと思い出した。
「あ、ゆーじさん」
部屋のドアが開いたかと思うと、轟が入ってきた。
家に帰ってきてそれなりの時間が過ぎているのだろう、彼はスウェットに着替えていた。
「大丈夫っすか?」
「あぁ、大丈b……あだっ?」
起き上がろうとすると、腰の辺りに骨が軋むような鈍い痛みが走る。
遊子の抱きつき攻撃は、まだ雄司の体にダメージを残していたらしい。
轟ほどではないが雄司も丈夫な方で、どれほど激しい喧嘩をしても次の日には必ず学校へ足を運んでいた。
ある種武勇伝を示す行為にもなるかもしれない、などと言う虚勢が奮起を促していたのかもしれない。
その意地をもってしても、この痛み。
「けーすけさん呼んで来ますね!」
「待て、ついでに妹さんを、呼んできてくれないか……?」
「遊子っすか? いいっすけど」
「頼む」
おかしな感情が渦を巻いていた。
不可抗力とはいえ、此処までダメージを与えてくれた相手だ。
話をしてみたい。
不思議と、悔しさはなかった。
「いやぁ、泡吹いて倒れてたときは流石に病院に担ぎ込もうかと思いましたよ」
轟に連れられて、苦笑しつつ入って来たのは岩久保敬介。
そして、
「……」
両手を組んで恥ずかしそうにもじもじと、勿論顔が紅潮している少女が後に続いた。
まじまじと見て、いや、一見しただけでも充分に可愛い魅力のある女の子だと言う事が分かる。
「ほら、遊子。挨拶しとけ」
「えと、波根洲遊子です……」
声も容姿に似合っている、鈴を転がしたような声とはこのような事かと雄司は思った。
「敬介」
眼差しに意志を込めて、一直線に送り出す。
送られた方はというと、
「轟、近くにコンビニあるか?」
「あるっすよー。案内しますぜ」
「ゆーじさん、何か買ってきますか?」
「適当に食うモンと飲むモン、あと煙草頼まぁ。金は後で出すからよ」
出すといったら出す、金銭勘定に関して雄司は結構シビアだった。
「行って来やす!」
威勢よく宣言すると敬介は轟の首根っこを掴んでさっさと降りて行った。
途中でガゴンガゴンとか言う音が聞こえたのは気にしないでおこう。
「「……」」
さて、取り残された。
と言うより雄司が自ら望んだ状況だ。
「まぁ、座れよ」
「ひ、ひゃいっ」
よほど緊張しているのだろうか、たった一言の返事すら噛んでしまった。
やはりモジモジしたまま、雄司とは1メートルほどの距離を挟んだ正面にぺたんと腰を下ろした。
そんな様子を見て、可愛いじゃねぇか、と雄司は苦笑を漏らす。
どうにか上体をベッドの縁に預けて、ポケットから煙草を取り出す。
轟は知らないが、実は予備は既にゲーセンで購入してあったりする。
「煙草、いいか?」
「ぢょっ、どうじょ……」
了承を得たので、愛用のオイルライターを用いて着火。
吸い慣れた煙の味が口腔に伝わるのを感じてから、ゆっくりと深呼吸。
煙が肺に行き渡った頃、遊子に掛らない様に紫煙を吐き出すと、すっかり黄ばんでしまった壁紙に煙が吸い込まれて消えていった。
「遊子、ちゃんだったか?」
ちゃん、などと言う呼び方をするのは何年ぶりだろうか、と心の中で呟き、似合わない言葉を使った気恥ずかしさを煙に撒いた。
「は、ひゃい」
「轟の野郎のことだから俺の名前を聞いた事はあるだろうが、自己紹介しておくぜ。俺は曾我雄司、轟とは高1の頃からクラスが同じだ」
「波根洲遊子でしゅ……です。遊ぶ子と書いてユミって読みます。兄からかねがね話は聞いています。マジパネェ人、だって」
「そうか」
家でもそのままの言葉遣いなのか。
「色々聞きたい事、言いたい事はあるんだが、最初に言わせてくれ」
「……」
遊子はぶんぶんと首を縦に振る。
「俺には、もう関わらない方が良い。つーか関わらねぇでくれ」
「ひぇっ!?」
この動揺加減、まるで昔の自分を見ているかのようだった。
「怖かっただろ? 雑魚とはいえ、あんなのに絡まれたんだからよ」
抵抗していれば、難なく撃退していただろうが、理性より恐怖が勝っていたらと思うと……。遊子は想像して身震いがした。
「はい……」
そして、また頷く。
「俺に関わろうとすると、必ずああなるぜ。だから俺は今まで女を作らなかった」
口だけなら『幾らでも食った』と言えるのだ。
そういう雰囲気だと悟ったときには敬介と轟は場を去るのだから、少々顔を作って脅せば殆どの女性は要求を呑んでくれるし、仮に飲んで貰えなくとも適当なムードを作って気を失わせれば良いだけ。
そういうわけで雄司は、昨今においては若年層にまで浸透ある貞操の乱れを冒さずに箔をつけているのだった。
「というか、そうでなくとも女は作りたくなかったんだ」
「どうして、ですか?」
やはり食いついてきた。
話すべきか、話す必要があるだろう。
それで納得してもらえるなら、己の過去を晒す事位安いものだ。
「遊子ちゃんは中2だったよな?」
数少ない轟情報である。
「はい」
「もう一年すると、何があるかわかるか?」
フィルター近くまで燃え尽きた煙草を灰皿の中に突っ込んでもみ消し、足を組み直す。
「受験、ですか?」
「正解だ。俺はその頃までずっと真面目君で通ってた」
隣の県での彼は、ちょっとした有名人だった。
ボランティア精神溢れる優しい少年で、その奉仕活動を見込まれた結果、街からも表彰を受けていたくらいなのだ。
女性に対する威容とも言えるレベルの潔癖さは、此処から由来する事になる。
「意外ですね……」
「んで、本格的な受験シーズンに指しかかろうとする頃に、親が家庭教師を雇ったんだ。幾らボランティア精神溢れる健全なガキッつっても勉強は下の上か中の下だったからな。皮肉にも善行だけじゃ世の中を渡れないって、その頃は知らなかった」
もう一本煙草を吸おうとして、箱の中身が空だと言う事に気がついた。
「その家庭教師ってのが、もう飛びっきりの美人でよ、まさに一目ぼれだった。あいつの顔を見れるなら幾らでも勉強を頑張れた。高校最初のテストの成績がよかったのは、それの賜物だったわけさ。今ではその5分の1も思い出せねぇけどな」
震える手が新品の煙草を開封する為のビニールを掴めない。
過去を晒すことに何の後ろめたさもなかったが、脳髄に焼きついた当時の情景が思い出されて、苦しかった。
「んで、肝心の受験なんだが、志望校はお袋が勝手に決めていた進学校だった。当時の俺の担任は『息子さんの成績じゃ厳しいですよ』なんて言ってたがよ、紛れもない事実だったんだぜ? お袋……親はそれを信じずに付け焼刃によって俺を鍛えようとした。その結果、見事に志望校にずっこけた」
ようやくビニールを剥がし、まっすぐな煙草を取り出し口に咥え、再び火をつける。
だが、煙草程度で体が誤魔化されることはなく。
「どうにか滑り止め――まぁ、今通ってる高校には受かったんだが、あいつは激怒して俺を散々罵倒してくれた。親も同じだった。周りの視線なんてもう酷かったぜ」
本来ならば唯一の味方であるはずの親でさえ、罵詈雑言と共に冷ややかな視線を投げかけた。
それは、同時に儚い初恋の終わりを告げていた。
「その時まで、どんなに辛くても出なかった涙が、一気に出てきた。恐らくこの先10年は1滴も出ねぇくらい泣きに泣いた」
「ゆーじさん、頑張ったんですよね? それなのに……」
逆に遊子の方が涙を浮かべ、雄司に同情してくれている。
こんなに嬉しいことは無い、無いが――
「いや、俺が悪かったんだ。努力が足りなかったから、あの重圧に耐えられなかったから、耐え切れなくて親に手を出してしまったから、一つ一つじゃない。全部が悪い」
煙草が燃えるちりちりと言う音が、耳に痛く感じる。
「そこから、今に到るまでそう長くは掛らなかった。一人暮らしをする事が決まって清々したもんでな。ついでに言うと、入学式に行った時の先公共の驚いた顔は今でも忘れられねぇ」
乾いた笑いが喉の奥から自然に漏れ出す。
「何処まで話す? 轟と会った時に話も聞きたいか?」
恥は全て晒した、もう震えは無い。
また煙草を灰皿の中に突っ込んで、遊子に向き直る。
「話してくれるなら、聞きたいでふ……です」
しばらく時間が経っている為既にリラックスしたのかと思えば、全然してなかった。
「俺はあいつの過去を知らんが、入学当初はいじめられっこ代表っぽかったな」
「ゆーじさんの言うとおり、兄はずっと中途半端でそれをネタにからかわれてたらしいです」
ある時は漫画家に憧れ、ある時はレーサーに憧れ、そしてまたある時から、雄司に憧れの矛先が向いた。
「入学式から2ヶ月くらい経った雨の日に、あいつ当時2年で頭張ってた奴に絡まれて、そのまま校舎へ連れてかれたんだが……そこに俺が通りかかった。何をする為かは、見りゃ判るだろう?」
灰皿を指差すと、遊子は理解したらしく頷いた。
「んで、俺も絡まれて、返り討ち」
特に格闘技の経験があるわけでもなく、力が強いわけでもなかった。
しかし、なぜか勝つことが出来た。
当然雄司も満身創痍の状態での辛勝だった。その日初めて救急箱が家にない事を悔やんだ事を思い出した。そんな教訓から、今彼の自宅には色々と揃っている。
「何故かあいつにはそれがかっこよく見えたみたいでな。それからはあんな感じだ。敬介は……まぁいいか」
確かに敬介に関しては轟が直接関係する出会いではなかった。これは別の物語で。
「何処で覚えたのかわからねぇ様な敬語でついてくるんだが、これがまたしっくり来てよ。嬉しかったんだ。俺みたいな腐り切ったのでも、ついてきてくれる奴が居るってことが」
そこまで言って、雄司は痛みを堪えて――
「え? えぇっ!?」
遊子に向けて、土下座をした。手と膝、鼻までしっかり地面に貼り付けるように。
「ちょっ、ぴゃっ、そんなパネェ……じゃなかった、みっともないことしないで下さい!」
「男の土下座ってのはな、本気で謝ってる証拠なんだ。俺はみっともないと思ないぜ。だから頭を下げさせてくれ」
そうして、冷たいフローリングに頭を付け続けること3分少々。
「あの、顔を上げてください」
「……」
今度は雄司が黙る番。
「わたし、ゆーじさんに感謝してるんです」
「は?」
兄をこんな下どうな道に引きずりこんでおいて、感謝?
どうかしている、と雄司は思った。
「さっきも言った通り、当時の兄は中途半端で、家族であるあたしにも、母にもどこか弱腰な態度でした。ちょっと嫌だったんですよ。顔に似合わないですし」
それは言えてる。
「でも、ゆーじさんに出会ってから、ちょっとだけど男らしくなったんです。まだ顔に似合うほどじゃないけど……。わたし、兄にはそうして生きてほしいんです。何より、兄があなたに付いて行くと見た事も無いような誇らしい顔をするものだから」
「遊子、ちゃん」
「こ、こきょ、ここからはわたしの私情なんですけど……」
再び遊子の顔が紅潮の色を帯びだした。
「わたっ、わたし、そんな兄の顔を見てるうちに、兄を変えてくれた人が、どんな人か知りたくなったんです」
轟が雄司をい初めて家に連れてきたときは、玄関で出迎えようとしたのだが勢い余って突っ込み雄司を見事失神させた。
それからも、轟の部屋に飲み物を届けようとして部屋のドアを開いたら、丁度良いタイミングで部屋から出ようとした雄司に全力で押されたドアがぶつかったりとか。
送る挨拶をしようとして、勢い余って雄司を階段の上から押してしまったり。
ある種殺人未遂にならない方がおかしい。
緊張したまま行動する遊子も遊子だが、毎度毎度致死になりかねない(不可抗力の)攻撃を受けてもまったく無傷な雄司はマジパネェと言わざるを得ない。
「それで俺は、毎度毎度轟の部屋で目覚めてたわけか」
「は、はい……。ごめんなさいっ!」
「シャイ、ってやつだな。可愛いじゃねぇか」
「ぴゆぁっ!?」
ぽっぽー。
「本当に轟の妹には見えねぇ」
「え、えええええ、えっと……」
「だが、俺は見ての通りだ。関わらないのが身のためだ。幾ら強いっつってもな。世の中それだけじゃ罷り通らないんだぜ?」
「……」
しゅん。
「まぁ、でもあれなんだだ。恥を晒したらすっきりした。下らん事を聞いてありがとうよ」
「あ、え、いえ、聞きたかったですから」
わたわたと両手を振って、雄司に非はないと主張する遊子。
「さて、そろそろ轟達も戻ってくるな」
「そう、ですね」
最寄のコンビニへ、徒歩で15分。敬介の気遣いがあれば1時間と少しで戻ってくるだろうことを時計で確認する。
「遊子ちゃん」
「ひゃっ、はい」
「さっきは関わらない方が良いっつったが、もし良かったら、時々話をしようぜ。どんなことだっていい。俺達ゃ、もうダチだ。轟や敬介も混ぜて……」
燻っていた薪は、太陽に照らされることで少しずつ本来の役割を果たす為の準備を始めた。
「はいっ! ゆーじさん、マジピャネッ……パネェっす!」
兄の口癖に乗せて、小さな太陽は明るい笑顔を浮かべつつ、己が役割を見定めた。
少なくとも、これは恋と呼べるような高尚な絆ではない。
だが何時か、薪が燃え始めて周りを照らすことで、太陽は月へと役割を変えていくだろう。
今はまだ――

外伝の1 パネェっす! な恋が走り出すようです。了









「ゆーじさん! 大変っす!」
珍しく敬介が慌てた様子で戻ってきた。
彼がこんな表情をする時は、本当にヤバイ状況であることを雄司は知っていた。
「何があったのか?」
「……轟が、轟が」
「お兄ちゃんがどうかしたんですか!?」
「敬介、落ち着いて話せ。何があったんだ?」
「轟が、車に轢かれました……っ!」
皮肉にもこの不幸な事態が、別の物語の種になるとは、この時はまだ誰も思いもしない。

「先生、急患がきます! 至急手術準備を!」
平和だった病院内に慌しい足音がどたどたばたばたと。
「折角の静かな夜勤だったのに、平和を破ってくれたのは何処のボンクラだぁ?」
そんな中、ナースステーションにいた1人の女性看護師が、気だるそうにそんな事を呟いた。

救急車がけたたましいサイレン音鳴り響かせ、深夜の散歩に出ていた二人の女性の横をドップラー効果を残しつつ通り過ぎていく。
「何かあったのかしら……」
「この辺も物騒になったよね~」
やはり物語りに巻き込まれることを知らないその登場人物たちは、下らない世間話を交えつつ自宅へと戻っていくのだった。

It advances to another story...
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Posted on 23:57 [edit]

category: 小説<オリジナル>

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