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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2009

04/18

Sat.

さよこい えくすてんど 

第1章1の幕「さよならから始まる出会いがあるようです」


その日の朝、藤代耕平は寝不足のまま大学への道をとぼとぼと歩いていた。
見事なまでの猫背と隈、加えて覇気の無い眼差しがそれをより顕著に表現している。この状態で夜道を歩いていたら職務質問されること必須だろう。

「……」

うっすらと白い化粧をしている青空は彼と違って健康的。
太陽は彼の気分や体調など一切気にせず、光を送り届けている。
恨めしげに視線を上げようとするが、すぐに光の強さに負けた。

「ふあぁ~」

あくびをしながら人気の少ない大学の正門をくぐり抜ける。普段なら沢山の学生等が各所を往来し、賑わいを見せているはずなのだが、この日……というよりこの時期はサークルや部の活動をするために来ている輩がいるくらい。
要するに長期休暇だ。季節は3月も半ばに指しかかろうとする頃。
大概の学生は次の学年へ進むまで、羽を伸ばしたり、自分のやりたいことをしたりしているのだが、彼は例外だった。
ありていに言って進級が危ういのである。
教授に頼み込んで追加レポートや課題、もしくは補講をしてもらえないかと必死に頭を下げ続けること3日。どうにかその機会を得ることに成功した。
その機会の中で居眠りなどしてしまったら、積み上げてきた時間や、すずめの涙ほども無い彼のプライドが泡と化してしまう。
そんな事を思うと、自然と背筋がまっすぐになった。
構内の清掃仕事をしている壮年の女性に軽く会釈をし、校舎の中へ。
前述の通り眠れなかった為、早めに来てしまったから補講が始まるまで教室で寝ていようと思ったわけだ。

「まったく教授も、何もこんな時間から補講をやるとか言わなくてもいいじゃないかよ……」

自業自得だ。
元々それほど多くない体力を半ば限界まで使い階段を上り、補講が行われる教室へたどり着いた。
普段はスムーズにあけられるはずの引き戸がものすごく重たい。

「……あれ?」

仮に自分と似たような境遇の人物がいてもおかしくは無いため、ひょっとしたら誰か来るのではないかと思ってはいた。
しかし、よもや先客がいるなどとは思いもしないだろう。耕平は間の抜けた声を出してしまった。

「あ、おはよう」

しかも。
その同じ境遇の『仲間』が、大学内でも評判の美人の姿だというのだから、彼の思考が寝不足により鈍りに加え混乱してしまう。

「お、おは……よう」

彼女のはっきりとした挨拶の声に、耕平はしどろもどろになりながら挨拶を返すことに成功した。
今まで女性という存在に全くといっていいほど縁の無かった彼だ。それも相手が美人と来ればどぎまぎするのも無理はない。
とりあえず席に着こうとギクシャクに足を進める。
出来るだけ女性を意識しないように心がけて通り過ぎようとしたが、やはり目が行ってしまう。

「?」

一瞬だけだが視界に入った彼女の顔にはちょっとした違和感があった。
いつもどおりの美人のはずだが、何かがおかしい。
椅子に腰掛け、机に体を預けるようにうつ伏せて、トリップ仕掛けていた思考を整理。
そして彼女に対して抱いた違和感の正体を探す。
いい感じに眠くなってきた其の時。

「藤代君、今日は早いんだね」

まさか今度は彼女から声を掛けられるとは思いもよらず、耕平は一気に覚醒し体を起こした。
まるでいつも遅刻をしているようじゃないか、と言おうとして彼女の意見が正しいことに気づいたので違う答えを模索。

「そりゃあ……ねぇ。この補講を逃したら留年確定だから、僕だってたまには真面目に来るよ」

苦笑しながら出した答えは及第点。

「その割には、とても眠そう。寝てないの?」

参考書か何かの問題を解いているのだろうか、彼女はペンを動かしたまま問いかけた。
1度に2つのことをそつなくこなせる彼女の器用さに感心しつつ、

「昨日色々あってね。早めに寝ようとしたんだけど……やっぱ眠れなかった」

返答はオブラートを何重にも包んで。
例の別れの一件から気分が乗らず、いつもより数時間速早く――具体的に言うと、日付が変わって少し経った後にはパソコンの電源を落としたのだが、色々な想いが錯誤する中で落ち着いて眠ることも出来ずそのまま日が昇ってしまった。

「篠崎さんこそ、いつもこのくらいの時間にはここにいるの?」

振った話題を1つ2つのキャッチボールでぶった切る無愛想な奴だと思われたくないので、耕平も質問を返す。

「私もちょっと、ね。構内で勉強してれば気がまぎれると思って」

ふと、彼女――篠崎睦美の手が止まった。
艶やかな輝きを放つ黒色の長髪がさらりと揺れて、隠れていた彼女の横顔、その目元が見えた。
それにより、違和感の正体が同様に露呈される。

「……不躾なことを聞くようだけどさ」

不自然なほどに、自然に。

「泣くほど、辛いことだったの?」

耕平は違和感の答えを率直に口に出していた。

「えっ?」

睦美が驚いたのと同時に、耕平は自分のデリカシーの無さに心底呆れていた。
ある意味女性(美人に限る)に対する固定観念のようなものというか、奇妙に折れ曲がったフェミニズムが、彼女が泣いたという事実を許せなかった。
睦美は目元に手を添え、若干照れているような、それでいて恥ずかしそうな顔をした。

「……うん」

彼女は明後日の方向を見つめて、

「大事な場所、大切な人と、お別れしてきたんだ」

呟いたときに睦美が浮かべた、哀愁に満ちた表情を耕平は美しいと思ってしまった。
数秒の重苦しい沈黙を挟み。

「ごめん、嫌なこと聞いちゃって」

慌ててデリカシーの無さと女性真理を知らない自分の馬鹿らしさをひっくるめて詫びた。

「気にしないで。こっちこそ、ごめんね」

睦美に非は何もないが、謝ったことにより微妙な空気が場を支配する。
なんだか胃が痛くなりそうだった。というか、痛い。

「ありがとう、心配してくれて」

そんな中、睦美がふと呟いた。

「へ? 何か、言った?」

感謝の気持ちと言葉は、胃の痛みのせいで耕平にははっきりと届かず。

「ううん、なんでもない」

まぁ、藤代君らしいかな……。とそんなことを思い、苦笑しつつ睦美は再び参考
書の問題を解くことに集中するのだった。

「……」

空気の重みが消えたことにより、耕平は胃の痛みが消えた安堵感からか机に突っ伏し、きっかり10秒で意識を飛ばし――凡そ35分後やってきた教授に分厚い参考書(某住所録並)の角攻撃を食らった。




まだ痛みが消えない後頭部を気にしつつ、補講が行われている中で耕平は睦美に視線を移した。
篠崎睦美。
耕平が知る彼女の情報と、耕平が抱く彼女への印象。
成績優秀。
容姿端麗。
品行方正。
温厚篤実。
高嶺之花。
最後は無理やり感じに纏めたが、まぁ妥当な線。
さて、此処で謎。
何故、絵に描いたような『ザ.パーフェクト』な彼女が、耕平と同じ場所で補講を受けているのか。
耕平は仮説をいくつか挙げてみることにした。
仮説その1。何かの遊びに夢中になってしまっていた。
彼女の趣味などは良く解らないが、少なくとも誠実な趣味だと思う。尤も、容姿に似合わないような趣味だとしても睦美ほどの人間なら何をやっていても似合いそうで困るのだが。
とはいえ、男遊びなどとは思えない。構内でも何人もの英雄が彼女と言う壁に頭から突っ込み『ごめんなさい』という返す言葉のナイフに撃沈してきたのだから。ちなみに、耕平の友人も2人ほど撃沈済み。
噂ではあるが、女好きとして名が広まっていたある男が、彼女に振られて以来大学に顔を出していないとか。
一体何の為に大学に来ているのやら。
無論、耕平が同じ事を問われたら閉口すること請け合いだ。
というわけで、之は無いだろう。
仮説その2。病気か何かで長期欠席していた。
耕平はサボりがちだったが、同じ単位の講義を受けるときはほぼ必ず彼女はいた、と思う。
それに講義そのものは真面目に受けていたし、今もそれに然り、至って健康そうだ。
よって、これもありえない。
仮説その3を挙げようとしたところに、

「藤代、聞いてるのか?」

教授の横槍。

「あ、すみません」

「後でお前に出す課題、この定理が理解できていないと他のも理解できないぞ」

ならば真面目にノートを取らねば、と耕平はシャープペンを手に、ホワイトボードの内容を急いで書き写し始めた。




必死こいてノートを取り続けること100分×2回。
昼食の時間と言うことでようやく休憩にありつくことが出来た。
やはり人のまばらな食堂に足を運び、きつねうどんの食券を購入。
早々と出来上がったそれを適当な席に置いて、今度はジュースを買いに行く。
容量の悪い話ではあるが、頭に蓄積されている糖分が不足しているこの状況ではそこまで回転するはずも無く。
糖分がたっぷり含まれているであろう炭酸飲料をちびちび口に流し込みながら、席へと戻る。

「シンプルな昼食だね」

思いっきりむせた。

「だ、大丈夫?」

この状況でカップに波々と入ったジュースを零さずにいられたのは奇跡というべきか。
驚いたとき、炭酸飲料を口に含んでいると凶器になりかねないな、と耕平は思った。

「何とか……」

「ごめんなさい。まさかむせるほど驚くなんて思わなくて」

「驚いたのも、むせたのも僕自身の臆病さが悪いんだ。気にしないで」

とは言え、耕平の日常としては女性(それもこんな美人)の方から声を掛けられるとは、半年に一度あるかないかの幸運である。
よくよく思い出してみると、朝も彼女から声をかけられていたような気がする。
ということは。

「一年分の運がパーかな……」
この運気が趣味に影響しないことを祈るばかり。流れが良いまま行くと言うのなら離したくないが、そんな都合の良い話は無い。

「?」

台詞が聞こえていたのか、睦美がきょとんと。

「あ、こっちの話」

気恥ずかしくなったので誤魔化して。

「篠崎さんは、まだ注文してないの?」

割り箸を適当に割って、昼食開始。

「私はお弁当作ってきてるから」

そう言いながら、睦美は『耕平の目の前』の席に着き、可愛らしい小袋を見せた。

「ここで、食べるの?」

再び思考が混乱。

「駄目かな?」

彼女からすれば、単純な会話相手だろうと割り切っても、

「いやいやいやいやいやいや」

耕平に取っては大歓迎すべきこと。しなければ、夜道に気をつけなければならなくなる。
ただ、この状況がもっと早い時期、出来れば学生でにぎわっているタイミングで起きていたら――なんて事を想像して、耕平は嬉しさ反面恐ろしさ半面という心境。
耕平は知っている。
篠崎睦美ファンクラブ、という非公式のサークルがあることを。
ゲームの中でなら、どこにでもありそうなマドンナの追っかけサークルだが、実際にあると分かるとちょっと変な気分になる。
それならまだ良い。
問題は、その連中の行動内容にある。
『週刊篠崎睦美』という小冊子を刊行し、まるで信仰の様に彼女を讃えるのだ。
これじゃまるで宗教の教祖である。

「藤代君」

此処まで病的だとさすがの耕平も、引く。
例えば、自分とは余りにも身分が違う存在――例えばアイドル、例えば世界的なモデル、女優etc...ならおっかけが出来てもおかしくない。
存在が余りにも高みにあり過ぎるが為、その存在の情報や知識を共有したいとか。
その存在に少しでも自分達を認めてもらいたいという願望が組織を生む。
だが、篠崎睦美という存在は。

「藤代……君?」

たとえモデルや女優に引けを取らない容姿だろうが、どれだけ性格が良かろうが、所詮は同じ大学に通う仲間ではないのだろうかと耕平は思う。
かといって、それが行動に移せないのが彼の性分だったりする。

「うどん、伸びちゃうよ?」

考え事の深みにはまっている彼を睦美が不思議そうに見つめ、呟いた。

「え? あ、うん」

指摘されてから、いつもより早いペースで柔らかめのうどんを啜っていく。
耕平の悪い癖である。
答えの出ない考え事をしている内、気がつけば大事なことを逃していることが良くある。ありすぎる。

「くすくす……藤代君って、どこか抜けてるよね」

愛らしい微笑を浮かべながら、睦美は言った。

「よく言われる。自覚もしてる」

長年付き合いのある友人には、そんな考え事をするときの仕草の特徴まで覚えられている。

「いつものこと、なんだけどさ。考え事が深みにはまりやすい性格なんだ」

「それって、いいことだと思うけどなぁ? 私なんて、悩み事が無いんじゃない? って言われるくらいだよ。確かに、そんなに深い悩みがあるわけじゃないんだけどね。大概の悩みなんて直ぐ忘れるか、解決しちゃうもの」

「前向きって言うんだよ、そういうのは。篠崎さんらしいし、何より人間的に立派だし」
まるで自分とは対極の存在である睦美が、耕平にはひどく遠い存在に思えてしまった。
なるほど、これならアイドル扱いされてもおかしくない。

「そうでも、ないよ」
慎ましいペースで行儀良く動いていた箸と咀嚼が止まり、代わりに言葉が紡がれる。

「私だって、結構悩みがあるけど」

「ある、けど?」

「――藤代君に言うことじゃないかな」

「ですよねー」

ついつい趣味の中での口癖が出てしまった。

「!」

今度は睦美が驚いた様。
小さく咳を繰り返す動作すら美しく思えるが、そんな場合じゃないと、耕平は睦美の水筒のコップに中身を注ぎ足し差し出した。

「……ふぅ」

「だ、だだ、大丈夫?」

「ごめんね、ちょっと以前の事思い出しちゃって」

「篠崎さん謝りすぎ。悪いのは僕の方なのに」

彼女が驚くような言葉を口にしてしまったわけだが、あの一言に驚く要因があったのだろうか?

「そうかなぁ」

若干頬を膨らませて、納得が行かないと表現する睦美。
耕平の知らない彼女の意外な表情を垣間見たが、何故か不自然には思わなかった。

「そうでなくても、そういうことにしておいて」

「変なの」

耕平は、この時思った。
余計な深みにはまったけど、こうして話してみた限り、彼女は高嶺の花とは言わない。
高嶺の花という人種は総じて人を寄せ付けなかったり、プライドが高かったり、或いは手を出せるという雰囲気をみせないという先入観があるから。
そもそも睦美が『耕平の基準による高嶺の花』だというのなら、まずこんな状況にならないだろう。
自分が上手くコミュニケーションを取れているかは判らない。
少なくとも、今この瞬間彼女の浮かべている笑顔が、裏表の無いものであることを祈って。
耕平も久しぶりに笑顔を浮かべた。

第1章 1の幕 了
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