10« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.»12

Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

--

--/--

--.

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Posted on --:-- [edit]

category: スポンサー広告

trackback: --     comment: --

Page top△

2009

08/11

Tue.

さよがたり 外伝 

虎穴に運び込まれた馬鹿と銀色の狼のようです

第4章「どっちもどっちで 影≒光 なようです」



「よーう」
とある病院の喫煙室にて。
先客を見つけた千晴は咥えていた煙草を放して、そう言った。
「あ、ちはるさん。こんちゃっす」
火の点いたタバコを片手に持ち、椅子に腰掛けていた轟はそう言って笑顔を浮かべた。空気清浄機の脇には松葉杖が立て掛けられている。リハビリの最中と見て良いだろう。
「一応看護師の建前上言っておくが、喫煙は傷の治りを遅くするんだぜ?」
「そーなんすか?」
とは言うものの、
「……の割には恐ろしい回復力だとは思うがな」
完全に折れていたはずの彼の両足はほぼ完治を果たし、現在に到る。
「骨折は初めてなんでよく解らないッす」
「人間の身体だとは思えねぇな」
「ひどいっすねぇ」
ガタイの良い彼の背中がなぜか小さく見える。
「なぁ、波根洲。お前何か悩みでもあんのか?」
そんな様子が気にかかるので、千晴は問い掛けてみた。
生憎どこかの誰かみたいに、遠まわしにそれを癒したりする事は出来ないので、解決するには直接聞くに限られる。
「特に何があるってわけでもないっすよ。ただ少し退屈なだけっす」
病人に与えられる自由と言うのはごく限られたものというのが当たり前。
喫煙は……気にしてはいけない。
「退屈ねぇ。散歩でもして来りゃ良いだろうに」
「ただ歩くだけじゃ時間を潰した気にはならないんすよ……」
彼の容姿はどうしても人を遠ざけてしまう為、他人との交流は難しい。中身を知ってしまえば、気の良い馬鹿なので親しみやすいのだが。
もう一つ、大きな要因として、今までの生活の刺激が強かったというのがある。
ただ何もしないで過ごす時間というのが、どうしても耐えられないのだろう。
「オレだって何時でもお前の話し相手になれるわけじゃねぇからな」
「須山さーん」
喫煙室の外を看護師が走り回っている。
「呼ばれてるみたいっすね」
「あぁ、事務ほっぽりだしてここに来たからな。まぁ、婦長にどやされて来らぁ」
灰皿へ吸殻を入れて、千晴は喫煙室を去っていった。
「頑張って下さい」
千晴にエールを送ると轟も吸殻を捨てて、松葉杖の支えを頼りに立ち上がった。
リハビリ担当の医師にはトイレと言って出てきたので、多少怒られるかもしれないが気にする事は無い。
「俺も、頑張るか」

「んぉぉおお」
そしてリハビリ再開。
情け無くも野太い声がリハビリテーション室に響く。
「ほら、頑張れ、もう少しだ」
手すりに両手を預けて、少しずつ脚を動かしていくが、何ともぎこちない。
「うぉっとぅ!?」
どたがたん。
足が縺れて、無様にも床へ倒れてしまう。
「惜しいなぁ……。まだ頑張れるかい?」
誰にでも笑顔で接することが出来ると評判のリハビリ担当医は白い歯を見せつつ、そう問い掛ける。
「うぃっす」
松葉杖をしっかりと掴み、まるで生まれたての馬の様に足を震わせながら立ち上がると、手すりの先まで歩いて行く。
「何故か力が入らないんすよねぇ」
「ギブスも取れたんだからあとは気の持ちようだよ。回復が早かったんだからリハビリもすぐに終わるって」
リハビリと言うのは痛みや苦しみが付き物。
確かに開始した当初は物凄く痛かった。しかし、今ではそんなこともなく。
轟本人も気付かない深層心理的な何かが作用しているのかもしれない。
そして担当医にはそれに心当たりがあった。
「ひょっとしてもう須山さんに会えなくなるのが寂しいのかい?」
「へ?」
すってんころりん。
「あぁ、ごめんごめん。でもスタッフ内じゃこの噂で持ちきりなんだよ?」
「はぁ……」
「あの須山さんがねぇ」
感慨深げに担当医が腕を組んだ。
「どういう意味ッすか?」
「彼女美人だけど、性格がちょっとあれだからさ。同僚と揉めるのは当たり前で、入院患者とも言い争いが絶えないんだよ」
「優しい人じゃないっすか。そりゃあたまに殴られるんすけど」
「普通、殴らないのが優しい人だと思うのは僕だけかなぁ」
その後は何事もなくリハビリをこなし――といっても相変わらずの調子なのだが――すっかりすっきりと時間が過ぎて。
「それじゃあ今日はここまでにしようか。お疲れ様」
「おつかれっす」
轟がひょこひょことリハビリテーション室を後にしたのと入れ替わりに、女性看護師が1人優雅な歩調でやって来た。
「あれ、今日は堀越先生の所じゃないんですか?」
普段なら彼女はこの時間イケメン外科医の所で密会をしているハズなのだが、どうして冴えないリハビリ専門医の自分の所へやって来たのか、彼には皆目見当がつかない。
「彼はもう良いのよ」
「はい?」
彼が嘘をつくような人間には見えない。
仮に嘘をついたのだとしても、それは人に気を使う嘘であって方便扱いされるはず。
実際担当医の彼も、堀越には良くして貰っている。
「まぁ、そんなことどうだっていいじゃない。私はあなたに用があって来たんだから。ちょっといいかしら?」
「片づけしながらでも良いですよね」
「構わないわ、波根洲さんの事なんだけど」
彼女は休憩用の椅子に腰を掛けると、慣れた仕草で足を組んだ。きっとああいう艶かしい挙動の一つ一つが男を魅了して止まないのだろう。
「面食いの貴女が、彼を的にするだなんて一体どういう心境の変化ですか……」
苦笑しながら器具をせっせと片付けていく。
彼女の方を見ながら話をすると、いまいち理性を保つ自信が無いのが理由だったりする。
どこぞの大学生のように初心だが特に彼と関係があるわけではない。
共通事項として『女性関係に疎い』というだけ。
「そういうのじゃなくて、彼の性格って……どうなの?」
「どうって?」
「私が遠目に見るだけでも、見た目に似合わない性格なのは解ってるわよ」
ちょっと声音に棘が混じり始めた。なるほど、彼の事が気に食わないらしい。
「ああ見えるけど真面目で、言う事はちゃんと聞きますし、(未成年)喫煙さえ直せばとても接しやすい患者さんだと思います。あとは女性に目が無いみたいですね。でも聞いた話、須山さんがしっかりと手綱を握っているらしいです」
リハビリ中、彼は道行く女性看護師に余所見をして何度も転んでいたりした。
「ふぅん……皆言う事は同じ、か」
人知れず彼女は呟いた。
「?」
「こっちの事、気にしないで」
さて、と彼女は立ち上がり、
「話してくれてありがとう。今度お食事でも……どう?」
何を思ったのかそんな事を言い出した。
「何で俺なんですか? 堀越先生が駄目でも、この病院の男性医師って比較的レベルが高いって言ってたましたよね」
「あら、自覚が無いのね。私の中じゃあなたは結構評価高いんだから」
実際それは間違いではなく、根っからの奥手、所謂草食系だという事さえ除けば彼の人柄は充分人を惹き付けるものがある。
「はぁ……僕で良いなら、いつでもお付き合いしますよ」
女心と秋の空、とは良く言った物。
いや、元々彼女の本命は――

さて、高々この章だけの出演だというのに随分目立って(しまって)いるこの女性看護師。作者の意思とは裏腹に結構使いでのあるキャラなのかもしれない。
よって、しょうがないので彼女にも多少スポットを当てようと思う。
「須山さん」
人の少ないナースステーションにて、彼女は事務仕事をしている同僚に声を掛けた。
「うげ、何だよ……?」
声を掛けられた千晴はというと、厄介事の素が来た、等と言わんばかりの苦々しい表情になってしまう訳で。
「今日の仕事は終わりそう?」
「は? お前にゃ関係ないだろ」
相変わらず女性として品性に欠ける言葉遣いだが、我慢我慢。
「良ければ仕事が終わったら、お付き合い願える? 行きつけの美味しいイタリアンを出す店があるのだけど」
「……お前まさか」
積り積もった何とやらを晴らす為に、
「恨み辛み嫉みは勿論、お礼までしっかりとするのが櫻井家の家訓なのよ」
では無いらしい。
確かに恨み辛み嫉み、それらはほぼ限界まで溜まっていた。
しかし、それを補って余りある借りがあるのだ。
「今更とはいえ、案外律儀なんだな」
その借りが出来た日からまもなく1ヶ月が過ぎようとしており、千晴はほぼ忘れかけていたのは内緒である。
「心の整理が大変だったおかげで随分遅れたわ」
幾ら綺麗に整頓された心理状態でも、千晴と言い争いした後の状態は正に嵐が通り過ぎたかのような荒らされ具合だった。
その整理を早く終えるために、同僚の医師や看護師、果ては入院している子供達に彼女の仕事ぶりを聞いて回った。
正直言ってしまえば、驚いた。人生でも上位に食い込むレベルの驚きだった。
犬猿の仲と差し支えの無い彼女の仕事振りが、予想以上に優秀だったのだから。
正反対を地で良く彼女だからこそ出来る仕事があるんだと思い知らされ、何だかスッキリした様な、それでいてやっぱり納得が行かない様な。
「そりゃ悪かったな」
「で、如何? お礼なのだから勿論払いは私が」
「あぁ、構わないぜ。6時までには終わるから待っていてくれ」
時計を見ると現在5時を回ったところ。
千晴が使っているPCの傍に書類の束が、2つ。それぞれ薄いのと厚いのがある。時間的に見て薄い方が今日やるべき残りの仕事と見て良いだろう。
「なら私もそれまで仕事をやっていこうかしら」
ある程度割り振られている書類の束の中から一つを手に取り、櫻井は空いているPCに腰掛けた。
何だか周りがどよどよ、と。
「一体、どういう心境の変化だ?」
問い掛けた千晴の口から苦笑が漏れている。
「何もしないで居るより、こうしていた方が気が紛れるのよ」
ばたん。
「ふ、婦長!? 誰かーっ!」
どうやら驚きの余り失神してしまったようだ。
「何かあったn」
「どうしたんですk」
ばたばたん。
「えっ、ちょっ――?」
5時を過ぎたらどんな状況でも帰ると言われていた櫻井が居る事に心底驚き、野次馬がドミノの如くカタカタと失神していく。

櫻井早苗 25歳。独身、子持ち。
ちょっとショックな夕暮れだった。

「私はああいう風に見られていたのね……」
千晴が仕事を終えた時点で早苗も切り上げて、死屍累累としているナースステーションを後にし、2人は現在更衣室内。
早苗はと言うと、下着姿でため息一つ。
状況一つ違えば、若さを羨むが為のため息にも見える。
尤も、一時の母とは思えないプロポーションをしており、日々の努力を欠かさないので悩むことは無かったり。
「仕方ねぇだろ。オレだって意識が飛びそうになったんだぜ?」
千晴はと言うと、轟が初見で『結婚してくれ!』と言うのも解るようなグラマラスな体躯。(早苗から見れば)意外にも筋肉によってきっちりと締まっていた。
「……」
二の腕を見比べて、早苗は自分の腕をぷにぷにしてみた。うむ、肌触りは滑らかで柔らかい。
「何だよ? オレはその気は無いぜ」
「その身体つきなら、あの暴漢達をやっつけれるのにも納得だわ。ジムか何かで鍛えているの?」
「日々の訓練の賜物って奴だよ。またトレーニングしねぇと……」
はて、事務仕事を訓練とは妙な例えである。
が、力仕事が苦手な早苗である為、そこはかとなくトレーニングと置き換えることが出来た。
「それだけ鍛えてあれば十分だと思うけども、大変じゃあない?」
「そうでもねぇよ。ここを辞めたら本業に舞い戻ってブラック企業のエリート戦士だからな」
「――え? ここを辞めるの?」
思わず声が上ずってしまった。
「あぁ、元々臨時採用だったし、本業の会社から言われているリフレッシュ期間中、副業に就く事になってるんだ」
「そう、なら尚更誘っておいて良かったわ」
「ありがたく奢らせて頂くぜ」
「私も『副業』は辞めたけど、お金は充分余ってるから遠慮せずにどうぞ」
「「……」」
互いの顔を見合わせて。
「はッ」
「ふふ……」
笑みを交わすとまもなく本格的に動き始める夜の街へと足を繰り出すのだった。
案外、打ち解けてしまえば、2人の相性は悪くないのかもしれないようだ。

一方。
「失礼しますぅ~」
「ん? あれ千晴さんは……?」
「今日は帰りましたよ」
「ちはる~ん! マァイスニィトハァニィィィィィィっ! 俺は寂しいッすよぉぉぉぉぉぉっ!!」
「……ナニコノヒトカワイイカモ」

「――あんにゃろう」
街灯が灯り始め、月が頂に達しようとする夜の街を美女2人が闊歩。
片や光を反射する癖のある銀髪に、比較的動きやすいカジュアルな服装が良く似合い。
もう片割れは栗色の長い巻き毛に、露出度の高い、まるでドレスのようなヒラヒラの服に薄手のストールを羽織い。
正反対の魅力を持つ2人。
だからこそ相乗効果は大きく、道行く野郎共が振り返る振り返る凝視する。
後ろからにやけ面で近づいてきた野郎を振り向きもせずに蹴り飛ばし、千晴は毒づいた。
「どうかしたの?」
「いや、とりあえず明日朝一で轟をぶん殴りに行こうと思っただけ」
「おかしな事言うのね、気を許せる相手を朝の挨拶代わりに叩きに行くなんて」
今度は前からやって来た2人組みを左右のアイアンクローの後に腕力だけで路地裏に投げ飛ばし。
「イライラしている時にゃ喧嘩するのが手っ取り早いんだがな……」
どこかに手近なカモはいないものかとキョロキョロ。
あまりにも視線に含まれている殺気が激しすぎるので、視線を合わせるのを辞めるか、運が悪いと失神していた。
「死んだんじゃ……」
「オレの美しさに悩殺されたんだよ。だとすりゃ、死んだって本望じゃね?」
そう言いながらウィンク一つ。
ばたっ。
ばたばたばたばたばたばたばたたたたたたたたたた。
ばたたんばたたんばったったん。
「「……」」
「「見なかったことにしようぜ」しましょうか」
この日のニュースで、街中での大胆なテロか!? 等と言うニュースが速報されるが、二人は知る由も無い。
きっと見ても苦笑して知らぬ存ぜぬを通すだろう事もまた言うまでも無し。

「――随分空いてるな」
ビルの上層。
夜景が見渡せるイタリア料理屋。
……イタメシ? バブルじゃないんだから。
「先ほど倒れた人々の中に此処を予約していた方がいたのかも」
「だとしたら申し訳ない事をしちまったな」
元々こういう場所に来る人間と言うのは、店の雰囲気に圧されたり、品位を弁えている為に寡黙となる場合が多い。
内装は正に豪華の一言。
食欲増進効果があるとされる赤や橙をベースにしたセッティングで、清潔そうなイメージを齎す白いテーブルの上にはそれぞれ花が生けてある。要するにイタリア色を主張したいのだろう。
千晴は喫煙スペースあるのかなぁ、と言う事をまず一番初めに気に掛けた。
「いらっしゃいませ」
皺一つ無い服とネクタイをしっかり着こなしたウェイターが腰を45度に折り曲げて客を迎えた。
「予約していた櫻井です」
「はい、こちらへどうぞ」
何ともにこやか笑顔が良く似合う。
「オレああいうの苦手」
「言うと思った」
余裕を孕んだ笑顔、仕草としてストールを片手でふわり。
これもまた何とも様になる。
「煙草吸えるとこってあんの?」
胸ポケットに入っている四角い膨らみをぽんぽんと叩いて、千晴は苦笑した。
「店内禁煙、外に灰皿があるから行って来るなら注文してからにして」
「お前と同じので良いよ、オレこういうの疎いんだ」
「仕方ないわね」
「悪ぃな」
ちっとも悪びれていなさそうに手を振って千晴は一度店外へ。
「煙草を吸うと食事味が解らなくなるって言うけど、須山さんなら大丈夫かしら」
「おや、お連れの方は……」
「私と同じので良いと言っていたから、そうね――今日ある最高の食材を使ってフルコースを、値段は問わないわ。食前食後酒は貴方にお任せということで」
幾度もこの店を訪れている早苗だからこそ通じるVIP的な我侭である。
「かしこまりました」
やはりにこやか笑顔を崩さぬまま、ウェイターは厨房へと引き下がって行った。

さて。
戻ってきた千晴が食前酒の最高級シャンパンを文字通り呑み干したのをきっかけに、ウェイターの顔色が悪くなり始め。
前菜を一口で食べ。
主菜のパスタを音を立てて食べ、
メイン(イタリア料理には主菜が2種類あるんだってさ!)の肉料理に到っては、ナイフを使わずフォークの一刺し&一呑み。
「なんつーか旨いっちゃ旨いんだが、物足りねぇな……」
前菜と共に持ってこられたパンを齧りながら若干不満そうにそんな事を呟く始末。
「須山さんらしいといえば、らしいわね」
一方早苗は礼儀正しくフォークとナイフを使い分けて少しずつ料理を吟味していく。
ウェイターがかろうじて失神しないのは、早苗が何時も通りだと安心できたからだろう。
最高の素材を用い、シェフが技術と心を込めて大胆且つ丁寧に創作した料理なのだ。
古今東西、角を狙ったアタックチャンスを見事成功させているのだから、不味い訳が無い。
ともかく作った人に感謝しながら食べねば料理に失礼だ、というのが櫻井家の家訓にあるので、忠実に。
尤も、それを他人に強要はしない無いが。
「――で、お礼以外にも目的があるんじゃねぇの?」
食後のドルチェ(デザートの事)を突いていた千晴が、ふとそんな事を言った。
「鋭いのね」
「人の感情に対する嗅覚は本業柄尖っててな」
早苗は食後酒として出されているブランデーを口に含み、ゆっくり嚥下すると。
そうね……と被りを振った。
「堀越先生との『噂』を流したのは、貴女?」
「何だバレてたのか」
「やっぱり……。何処まで知ってるの?」
深く深くため息をついて、今度はブランデーを一気に呷った。
「お前が本当に好きな奴ってとこまで」
「貴女の本業って、もしかして探偵なんじゃないでしょうね」
「いーや、ブラック企業のしがないエリート戦士だっつの。ただちょっとだけ勘が鋭いだけさ。だからそっちが握ってるネタも知ってるぜ」
「それは、貴女自身の事だから当たり前でしょ?」
「全くだ。オレみたいな奴にも好きな男が出来るたぁな」
「ある意味じゃお互い様よ」
光と影。
表裏一体のそれはまるで違う性質を持っていながら、共通する感情を抱いておきながら、それを認められず他人に明かされることでやっと素直になれた。
「「まぁ、秘密ってことにしようぜ」しましょうか」
ブランデーを注ぎ足すと2人は乾杯をして、そして秘密ごと身体の中へと一気に飲み込んだ。
「さて、やっぱり物足りねぇ。次はオレが奢るからもう一軒行こうや。早苗」
「えぇ、千晴。今日は全て忘れるまで飲み明かしましょ」
散々いがみ合っていた2人は互いが互いの秘密を知ることで、灰色として調和を成すのだった。

――尚、余談ではあるのだが一つ。
この数ヵ月後櫻井早苗は、同じ病院に勤務しているしがないリハビリ専門医と恋に落ち、それはもうロマンチックなプロセスを経て結ばれたとの事。

もう一方は、果てさて、どうなるのやら。

第3章 了
スポンサーサイト

Posted on 11:29 [edit]

category: 小説<オリジナル>

trackback: --     comment: 2

Page top△

2009

08/18

Tue.

20:22

Rex #- | URL | edit

登場する女性がみんなすごくイキイキとしてて眩しいです。
こんなパワーが欲しいなぁーとか思う日々>x<

 

2009

08/21

Fri.

00:59

WEEZER #- | URL | edit

Re: タイトルなし

生き生きしていてパワーがあっても癖の強い連中だから、物語が成り立つわけですよ
まぁ、ちょい役から名前有りのキャラに昇格した中では、早苗は特に珍しいパターンw

まさかこいつの為だけに1章ふやす羽目になるとは思ってなかったからなぁw

 

コメント投稿

Secret

Page top△

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。