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Welt wunder

MMORPG「マスターオブエピック」の2次創作&オリジナル小説置き場兼MoE日記。誰が得するかって俺得。

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2008

09/12

Fri.

不定期連続小説「MoE/AtW」 

第12話「試合か、勝負か」


「まったく、あれほどワタクシに似合うハイキャスターローブは無いと思っていたのに……!」

肩を怒らせながら、イザベラは呟きになってない呟きを漏らした。

左右交互まったくペースを崩すことなく金色の縦ロールが揺れる様は優雅ながら、ちょっと滑稽でもあった。

「あなた達もそうは思いませんこと?」

「はぁ……」

この状態になってしまうとどんなことを言っても決して自分の意見を曲げないため、後ろを歩く二人は曖昧に相槌を打つくらいしか出来ない。

至極、迷惑顔。

「ともあれ、あんなひょろそうな男くらい軽く捻ってあの染色液を買わせてやりますわ」

「イザベラさん、お金あるはずなのに」

金持ちほど金に五月蝿いとはよく言ったものだろうか。

「ハウリルは解っておりませんわね、自分で稼いだお金で買ってこそ価値があるのです」

「って、此処のとこ狩りに付いてきてくれていたのは――」

「そういうこと、ですわ」

「生真面目ですねぇ」

委員長タイプが行き過ぎると、こういうのになるのかは定かではないし、イザベラは委員長ではない。

が、確かに彼女は誠実且つ真面目一辺倒なのはギムナジウムでも周知だった。

「まぁ、せいぜい後悔させて差し上げましょう。私を怒らせると、どうなるかを……」

「「……」」

真面目なヤツほど、突き抜けたときは怖い。

うん、コレはよく言う。

「――あら? こんな時間に町に居るなんて珍しいわねぇ」

闘技場に入る寸前、3人に声を掛ける一人の女性。

つややかな亜麻色の髪にゆったりとした白衣を羽織った、パンデモスの女性である。

「あ、先生」

「先生こそ、珍しいですね。買出しですか?」

「えぇ、丁度触媒が切れちゃったのよ。新しい魔法の研究をしてたのに……」

パンデモスらしからぬしおらしい仕草で、先生と呼ばれた女性は己の目的を告げた。

「ところで、あなた達模擬でもするのかしら?」

「模擬と言うか、何と言うか……」

私怨による決闘だ何て言えた筈も無かった。

「ちょっと先生!聞いてくださる?」

かくかく(只今)

しかじか(誇張を交えた説明中)

てぃうんてぃうん(終了)

「なるほど~、ひょっとしてミストの言っていた『彼』かしらん」

女性は柔らかな笑みと共に2、3度頷き。

「彼?」

「面白そうだから、私も見学させてもらうわねぇ」

「構いませんけども……」

「そうと決まったら、触媒買ってこなくちゃいけないわねぇ。どの道研究用に買うつもりだったから経費で併せて買っちゃいましょ」

何気にピントのずれていることを言っているが、そんなの慣れっこの3人。

「それじゃあ行ってくるわ~」

一瞬、女性の周りに風が渦を巻いた。

ふわりと白衣が舞い上がる。

言葉に似つかわしくない速度で女性は中央エリアへと駆けていくのだった。



さて、挑戦状を叩きつけられたサイド。

「……」

ビスク港のいつもの場所は何だか冷ややかな空気である。

アニェルは退屈そうにベンチに腰掛足をぶらぶらと揺らしている。

「煉」

そんな空気と静寂を、ブリュンヒルドが破った。

「ん?」

「いくら貴方が強さに自信があっても、イザベラは強いわよ?」

「目を見れば解る。ありゃ完全に勝つことしか考えてないな」

光を湛えた真直ぐな眼。煉が苦手な部類だ。

「悪い娘じゃないんだけどね、どうも盲目って言うか人の話を聞かないって言うか……」

「仲がいいんだな」

先ほどのやり取りだけでは彼女の短所しか見つからないのだが、ブリュンヒルドはそれを指摘しなかった。まぁ、物は言いようというヤツだ。

「単なる腐れ縁、彼女優秀だし何やかんやで頼りになるから」

否、単に指摘したところで当人が認めないだけか。

それでも短所を相殺できる長所があるのは、素晴らしいこと。ブリュンヒルドはイザベラのそんな長所を良く知っていた。

そして、それは逆の視点からもいえることだったりする。

「で、勝算はあるの?」

「このままばっくれてもいいんだがな。どうにもああいう天狗は、放って置けん」

「貴方も性格悪いわね……」

「お互い様だ」

「――肝心の勝算は?」

「何だエリノア、買い物を邪魔されたのによほど腹が立ってるのか?」

「違うわ。あんな感じの人じゃないと思ってたのに」

大きな善は小さな悪で簡単に塗り替えられてしまう。エリノアのイザベラに対する心境の変化が正にそれだった。

「え?彼女に会った事あるの?」

「あなた達二人がグリフォンを狩りに行ってたときの話しよ。アイアンゴーレムに襲われたところを助けてもらったの、後ろに居た二人も一緒だったわ」

「あー、あの時か」

「最近私のことを追っかけてるみたいだけど、何が楽しいのかしら」

それは本人達もよく分かっていない。

「心配してるんじゃないのか?友人として」

「ありえないわ。恋文は全部燃やしてなかったことにしてるし、一緒に狩りに行きたいって言う学校の人たちも、記憶を飛ばしてるから」

「お前、物をはっきり言うようになったな……」

ブリュンヒルドの中でも、確かに何かが変わりつつあるようだ。ちょっと悪い意味で。

「そうかしら」

「何だか話しが横道にずれっぱなしなんだけど」

エリノアは以前むすっとしたまま。

「まぁ、心配するな。死ぬことは無いだろうよ」

「べ、別にそんなことを心配しているんじゃなくてっ」

エリノアの懸念は、別にあった。

「……さて、準備も済んだことだ。行くとするか」

来た道を戻りだす煉。

「――エリノア」

彼の後ろについて歩き出そうとしたとき、ブリュンヒルドに小声で呼び止められた。

「?」

「どうせなら、3人より2人の方が良かったんじゃない?」

「……解らないわ」



決闘の舞台となるジオベイ闘技場。

朝昼夜問わず己の売れでも磨く若者やそれを指導する壮年から老年の男女で賑わいを見せる、気軽に立ち寄りやすい闘技場。

そんな場所が今日はちょっとした騒ぎになっていた。

「イザベラ様に喧嘩を売るなんて、馬鹿だよな」

「きっと、心臓を一刺しで終わりよ」

「回収した直後にドラゴンフォールとかされたら、もう回収する気が起きないぜ」

喧々囂々というか、なんというか。

「観衆はみな私の味方ですわね」

そりゃあ、皆さん事情を知らないもの。

ストレッチを行いつつ、イザベラは満足げな表情。

戦闘用に着替えた衣装は赤と白を基調とした軽装鎧。

諸兄等の知るところで言うナイトロード装備を赤く染め直したものである。

「どうかと思うよなぁ、アウェイっていうか針の筵だよ」

その後ろでハウリルが苦笑を浮かべた。同じ状況で闘えと言われても自分には無理だろうと思う。

「でもこの様子じゃきっと誰も信じてくれそうに無いんじゃないかな……?」

同じく苦笑を浮かべるフィリア。

「……」

何も言わず、ノアキューブでお手玉をしている先生。

「イザベラさん、殺しちゃだめですよ」

「りザとかするの方の身にもなってねぇ」

「解ってますわ、ふふふ……」

あー、解ってない。

武器であるレイピアを手に取り、2,3度素振り。

今日もよく手に馴染む。

「この金属なのにもっちりとした握り心地、さすが名工の御業といったところですわね」

「何だ? この観衆」

プロレスの興行みたいだと思い口に出そうとして、飲み込んだ。

熱気と冷気が交じり合ったような殺気が4人を包み込む。

「よく逃げませんでしたわね」

「まぁ、仕事のついでにもなるんでな。さっさと始めよう」

「その不遜な態度、何時まで続きますかしら」

「人の振り見て我が振り直そうぜ」

どこまでも、和解する余地は無いらしい。



四方を鉄柵で囲まれた正方形のリング。

尤も、床材はリノリウムでも木でもなく、歩けばコツコツと音のなる石の床。よく見ると洗い残しの血痕が残っていた。

「バフの時間をとらせていただきますわ」

「良く分からんが、好きにしてくれ」

イザベラが入念に呪文を唱えている間、煉はきょろきょろと辺りを見回し、その様子を記憶に留めていく。

「先生、開始の合図をお願いして宜しいかしら?」

「えぇ、いいわよ」

それまでノアキューブでお手玉をしていた先生は、淀みなく動き続けていたその手を止め、柵の前へ。

「ルールは、どうなってるの?」

「時間無制限、勝敗は負けを認めるか、相手が死ぬまで。他は何でもありですわ」

「へぇ、殺す気でいるとは随分な度胸だ」

煉の眼に、あのときの剣呑な光が宿る。

「リザはあるから心配しないで良いわよ~」

「それは、そうよね。いくら蘇生の呪文があるとは言え、殺害したまま放置は軍に捕まるから」

「……便利な世界だ」

それきり、煉は口を閉ざした。

「双方構えて」

若干おっとりした声で、先生が言う。

一瞬時計を確認し、

「始め!」

始まりの声と同時にイザベラが駆け出す。

その瞬発力たるや、並みの戦士を凌駕していた。

「ハッ」

先制の一突き、空を切り裂いて突き出されたレイピアが正確に煉の胸部を狙う。

だが更にその上を往く化け物も居るもので。

いとも簡単に横へのステップで回避。

「ふッ!」

着地地点を見計らって再び突きを繰り出す、先ほどより鋭いが、煉はひらりと身をよじってそのまま距離を取る。

「やりますわね……、しかしまだまだこれからですわ」

双方攻撃と回避のスピードが増していく、次第に剣先が見えなくなるほどの刺突。

そして、それをたやすく流していくのだから始末に終えない。

「避けているだけでは、勝てませんわよ?」

イザベラは余裕の笑み。

対する煉は無表情。

更に攻防の速度が上がる中で、イザベラが仕掛けた。

肩への突き――

「そこ、ですわっ!」

に見せかけた、フェイント。

体を横に一回転、神速の突きが煉の頭部を……掠めた。

「!」

決まったと思った一撃を往なされ、イザベラに焦りの表情。

そして、

「いいスピードだ。よく訓練しているな」

自慢の装備のショルダーガードの片方が外れていることに気がついた。

……何が起こった?

一度距離をとって、時折牽制しながら状況を整理。

フェイントを仕掛けた瞬間のことだ。

頭部へ放った渾身の突きを煉は刀身に横から腕を当てることで往なし、更にイザベラとは逆の回転を交えた蹴りが―

少し位置がずれていれば、顎から首根っこを持っていかれたかもしれない。

そんな想像をして、直ぐに拭い去った。

「まぁ、悲しい話、オレだって嫌な位経験を積んできてるんだ」

鈍くなった突きをひらり。

「なら、その不意を付くだけでしてよ」

大きく後方へステップ。技の体勢としてはタイダルすピアーと呼ばれるのだが、

「……スモールワープ」

何故かイザベラは煉の目の前に現れていた。

「終わりですわ」

突き出した槍には確かな感触がある。毎度毎度あまり好きになれないが、こればかりはどうしようもない。

引き抜けば、相手は倒れて終焉。観衆の賛辞が上がる。

「先生、リザレクションの準備をおねg」

「――まだだ」

次の瞬間だった。

イザベラの視界はぐるりと回り、体が石の床に叩きつけられる鈍い音と手放し放り出されたレイピアが同じく音を立てて床に落ちた。

「っ!?」

頭が揺さぶられ、見える世界もゆらゆら。

それでも経験と本能が生きたか壁際に飛びずさって、状況を再確認。

煉は、確かに立っていた。

腹部には刺し傷が見られる、間違いなくイザベラがつけた傷口からは鮮血が湧き出るかのように。

「短距離瞬間移動とはまた、えげつないな」

それでも余裕の笑みを浮かべるこの男は何だ。

「――これでも、立つのがやっとなんだがな。あとは止めを刺すだけだ」

抵抗はしない、と両手を広げるだけ。

観衆も静まり返っていく。

「さぁ、お前にオレを殺せるだけの覚悟はあるか」

例え彼を斃したとしても、直後に先生がリザをしてくれる、なら何を迷う必要がある?

「―言っておくが、オレはリザとやらを受けるつもりはない。やられたならやられたで、其処までだと言う事だ」

「お、脅しですの?」

自分の意思で蘇生を受けないのであれば、確かに話は変わってくる。

「どうとでも取ればいい。変人と罵られてもいい。だが、一つだけ言えるとすれば」

煉が言おうとしている事に気付いたのは、果たして何人だろうか。

「この世界は――」

「あぁぁぁぁぁっ!」

彼の言葉を認めるわけにはいかなかった。

絶叫と共に、止めを刺しにかかる。

「――やれるわけありませんわ、怖いんですもの」

切っ先を煉の左胸数センチ前で停止させたかと思うと、震える手はレイピアを握ることを拒否して地面に突き刺さった。

イザベラも膝からくず折れる。

「……そうか。ならオレの負けだ」

「え?」

「アンタには、オレを殺すだけの覚悟がなかった。オレにはあんたを傷つける理由がなかった。いい意味でも、悪い意味でも、勇気を振り絞った者勝ちだ。んで、投げて悪かったな」

あ痛てて、と刺された傷を抑えてリングの外へ。

「…………」

観衆も、二人の身内も、誰も何も言えない。

ただ其処へ、乾いた音が響いた。

「ヲイ、オレ一応怪我人なんだが」

煉の目の前に立つエリノアは、目に涙を浮かべていた。

「無茶するのも大概にして、しんぱい、したんだから……」

健気に泣くのを堪える彼女の頭に軽く手を乗せ、煉は視線を動かす。

「ブリュンヒルド、後は任せた」

「あっ、え、えぇ……」

「いてて……」

リングの外鉄柵に背中を預けて重い腰を据えた。

集中していたからこそ、痛みはあまりなかったが、気が抜けた今は死ぬほど痛い。

「試合に負けて、勝負に勝った。って感じかしらねぇ。強い男の子は好きよ?」

魔法の触媒を握った先生が、煉に声をかけた。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「本当ならこれくらいの傷は慣れてるはずなんだがな。如何せんこの痛みそのものが久しぶりすぎた」

アニェルの気遣いに精一杯笑顔を見せるが、どことなくぎこちない。

「ヒーリングオール」

先生が一言発すると、触媒と煉の体に光が溢れ、

「わぁ、すごいー!どうやったの?どうやったの?」

「これでも、伊達に保険医やってないのよぉ。ただこのレベルのヒールになると傷は直せても体力は一緒に回復させられないのよね。リフレッシュの強化版の開発しようかしら……」

「充分だ、っと……」

礼を言おうとして、先生の名前を知らないことに気付いた。

「マリオン、ギムナジウムビスク分校の保険医兼回復魔法担当教師よ」

そう言って浮かべた笑みは、パンデモスらしからぬ艶然としたものだった。

「ありがとう、楽になった」

笑顔に力が戻り、それを見たアニェルが嬉しそうに煉の手を握った。

「体力の回復は、君の場合眠ったほうが早いわね」

「煉、あなたまさか―」

「……」

答えを聞くまもなく、寝息が聞こえ始めた。

「イザベラ」

「私を笑いますの?」

「どっちも素晴らしいと思うけど?煉はあなたを傷つけない覚悟があったし、あなたも勇気を振り絞るだけの度胸があった」

確かにきっかけはきっかけだった。

期待を裏切られ怒っていたところへ、煉の態度がイザベラの更なる怒りを誘い、それで前が見えなくなった。

「狩りに出るとき以外は、意地でも練習用の安全なレイピアしか使っていなかったあんたに、此処まで度胸があるとは思わなかったわ。私じゃまず無理」

ブリュンヒルドは被りを振り、

「―ほら」

イザベラの一着の服を手渡した。

「これは……」

サイズは少々異なるが、煉が着ているのと全く同じハイキャスターローブ。

「あの露店主、私達が立ち去ったのを見るや、サイズの違うヤツを並べてたのよ。まぁ、商売だから文句は言えないけど。

ともあれ、その露店主は批難轟々と煉の回し蹴りを喰らって今頃宿営場で伸びてるはずよ」

それだけ言ってブリュンヒルドは煉の様子を確かめる為に踵を返した。

「――イザベラ、その勇気があれば立派な軍人になれるわよ。だから、ハウリルもフィリアも、そしてここにいる皆もあなたを慕ってくれてる。誇りを持ちなさい。でも、今回は今回で大切な事を学べたと思わない?」

イザベラの後ろ、鉄柵越しに学友二人が頷いた。

「いつものように笑ってください。それこそが僕らの知るイザベラさんなんですから」

「一時はどうなる事かと心配しちゃいましたよ、でも……一件落着ですよね?」

「……」

何故かイザベラは泣きたくなった。

しかしぐっと堪えて、立ち上がる。

表情はもういつもの彼女だ。

「今日は無様な勝利を見せ付けてしまって、申し訳ございません。寧ろ負けた彼の方が格好良いのかもしれませんわね」

観衆は未だ静寂に包まれたまま。

少なくとも、イザベラが他人に頭を下げたのはこれが初めてだった。

「次は、正式な『試合』でもって!彼から勝利を掴み獲ることを、此処に約束いたしますわ」

そして極上の笑みで宣言すると。

この日一部の人間を巻き込んだ金色の嵐は、これ以上ない喝采によって澄んだ黄金の微風となり、街並みへ解けていった―



To be continued...
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category: MoE小説<現行作品>

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